第10話
柱の影から出てきた五条の格好は、全身を鎧で囲み、背中にはこの国の国旗?らしきものが刻印されている赤色のマント。
……………うーん。かっこいいんだけど……かっこいいだけどなぁ!なんだあの絶妙なダサさは。五条のイケメンルックスにめちゃくちゃ助けられてるなアレ。多分あいつ以外が着たら爆笑間違いなしだろうな。
………良かったぁ俺勇者じゃなくて。
見てよ隣。あのどこぞのドラ〇エの勇者見たいな格好をしている五条見て潤が笑っちゃってるもん。
「………あ、あの……やっぱり鎧とマント外していいですか……?」
「何を言っている亘!その装備はこの国に代々伝わる女神アテナの加護をたっぷりと受けている伝説級の装備だぞ!」
「で、でもジョセフさん……これダサーーーー」
「この国に召喚されている勇者は全員!それを着て魔王討伐に赴いている。いわば、それは絶対に魔王倒せる装備なのだ」
「……………………」
あ、五条の目が死んだ。あと多分今までの勇者が全員それ着ていったのは勇者因子のせいだな。ほら、良い奴ほど勇者因子が多いから断れないんだよ、あんな力説されたら。
「よし!亘もお披露目できたからな!それでは訓練を開始する!」
「それじゃあまた後でね智」
「おう」
聖女(潤は男)である潤は、ジョセフさん達以外の特別な講師がいるらしい。聖女とは回復魔法でみんなを癒す天職。なんでも神殿の回復魔法を得意とする猊下が来ているらしく、潤だけその猊下の元で回復魔法を習うらしい。
フリフリと手を振ってから笑顔で行く潤。俺も手を振り返してから潤を見送った。
…………あれ一応女装だよな?似合いすぎてほんと女にしか見えん。まぁ格好については潤の尊厳を尊重してノーコメントだが。
さて、俺もあのイケメン講師の元に行きますかね。
「初めまして勇者の皆さん。私、このお城で宮廷魔法士として働いているメルトと言います。よろしくお願いします」
パチパチパチとメルトさんへ向けて拍手が起きる。
「今日、ここにいる皆さんは天職が後衛系ーーーつまり、魔法による適性が高い方たちです。きっと、私なんかよりも強い魔法を行使することが出来るでしょう」
メルトさんは指をパチン!と鳴らすとその手に大体5センチほどの火がゆらゆらと浮かび上がった。
おぉ……あれが魔法。しかも多分無詠唱ってやつだぞあれ。
「まず、皆さんが身につけることは、その身で魔力を感じることです」
…………ふーむ。
あれから五分。メルトさんに魔力感じてって言われてやってはいるが………ぜんっぜん感じれないんですけど!?
周りのクラスメートは着実と何かを掴んでおり、何人かは既に初級魔法と言われているのを使える程の猛者もいる。
あとなんか「いでよ!エクスプロージョン!」なんて叫んでいた男子がいたな。結局失敗したし、虚しく声が響くだけだったから恥ずかしい思いをしただろうけど。
しかし本当に魔力というものを感じられないのだが?あれ?俺って一応後衛職……
「順調ですか?」
俺たちを見回っているメルトさんが俺に話しかけてくる。
「………まだなんとも…ですね」
一応杖を振ってみたり、目を閉じて精神統一とかしてみるも、魔力のまの字も感じられない。
「そうですか……あなたの天職は?」
「えと……
「………あぁ、なるほど……」
メルトさんは何かウンウンと頷く。
「
メルトさんはスラスラ〜っと説明をし始めた。
「また、こういった使役系統の天職の方は一般的な魔法は使えず、その天職に対応した特別な魔法だけが使える……というのが今一般的な召喚・使役系統の天職の現実です」
「えっ」
じゃあ俺使えないじゃーーーーでもあれ?確か今やっと手から火を出したあいつって召喚術士じゃなかったっけ?
「はい、その通りです」
俺のチラッと移動した視線と多分顔に出た何かから俺の心を読み取ったメルトさん。
「勇者様たちはその現実を打ち砕き、関係なく魔法を行使しているのですが………あなただけなぜなんでしょうか……」
うーん……と何やらあごに手を当てて考え出すメルトさん。な、なんかすいませーーーーー
「あ」
「ん?」
そういえば……と思い俺はローブの懐から1つの本を取り出した。
「……!なるほど、それはナイスです。今日は基本的な事しかしない予定ではありますが、あなただけ変更します。君、名前は?」
「大河智です」
「智くん。その本を持ってきたのは本当にナイスです。では、今から
…………………ん?
「……え?いきなりですか?」
「えぇ、いきなりです。そうしないと多分魔力感じ取れませんので」
まじ?
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