第9話
「聖女……僕、男なのに……聖女……」
「……ま、まぁまぁ落ち着けって潤……」
「これが落ち着いてなんて居られないよ!!」
現在、天職鑑定が終わり、お城の食堂でお昼ご飯を食べている。
今日のお昼はなんかよく分からんスープと、なんかよく分からんお肉とパン。めっちゃ米欲しいけどまぁ異世界だから仕方ないよね。
………はぁ、米食いてぇ……。
とまぁ現在俺はいきなり日本の米が恋しくなっているのだが、潤の場合は別の意味で落ち込んでいる。
だって天職『聖女』なんだよ。確かに、潤はぶっちゃけそこら辺の女子よりも可愛い男の娘だが、聖『女』って決めつけるのはダメでしょ……。せめて聖者ならまだマシなもの、なんで女って決めつけてしまったんだ女神アテナよ……。
潤、女神も騙すその容姿、恐ろしい子!
バン!と机を叩いて勢いよく立ち上がる潤。一瞬だけクラスメートからうっとおしそうな視線を向けられるが、潤だと気づいた瞬間に一気に哀れみの視線に変わった。
「僕だって……僕だって!立派な男の子なのに!ちゃんと付いてるもの付いてるのに……なんで、なんで僕だけこんな目に合わないと行けないんだ!!うわーーーーん!!!」
緑川潤、ガチ泣きである。俺はそんな親友の肩を抱きしめて慰めることしか出来なかった。
頼むよ女神アテナ。今からでもいいからこいつの天職聖者に変えてくれね?
さて、午後からいよいよ訓練が始まるのだが、一旦俺は潤と別れ、一度別れていたエリーを呼んだ。
なんでも女神アテナに誓い、俺専属の勇者メイドになったことにより、何となくだが俺の気配を感じ取れ、また何となく俺が呼んでいる気がするという感覚があるらしい。
「それで智様、またまた図書館に来て今日はなんの用でしょうか」
「ん、今日は魔導書探し」
俺の天職はそう、いずれは最強のスケルトン軍団を作れる可能性がある
まぁ当然、俺はスケルトン呼び出す呪文とかなんか知らん。だから一縷の望みかけて図書館にやってきたんだが………。
「……ないなぁ」
「魔導書は貴重ですから。魔法入門と言った感じの本はあるのですが、
図書館をじっくり探すこと大体30分くらい。もうそろそろ午後の訓練が始まってしまう。
「……今日はここまでか」
「申し訳ありません智様」
「いや、エリーが謝る必要は無い……また探すから、力貸してくれるかな?」
「……っ、は、はい!この身は全て智様の物ですから」
「お、大袈裟だって」
少々オーバーな忠誠心になれずに未だに戸惑ってしまう。何度もエリーにやめてと言っているが、これが勇者メイドというものですという言葉に呆気なく斬り捨てられる。
「………ん?」
訓練に行くために、出した本を直していると、視界の端に『なんでも使える魔法陣の書き方』という題名の本が目に入った。
………これ、使えるかも。
「エリー」
「はい」
片付けを手伝ってくれているエリーに声をかけ、見つけた本を渡す。
「これ、ちょっと借りてきて」
「かしこまりました」
エリーが司書さんに貸し出しの作業をしている間にせっせせっせと本を直していく。
「……よし、終わった」
「智様、お借りしてきました」
「ん、ありがとうエリー」
「いえ、礼には及びません。……私はこの後、本職のメイドとしての仕事がありますが……」
ギュッ、とエリーが俺の両手を握ってくる。
「……その、怪我はしないように、お気をつけください」
うわぁ………エリーまじ可愛い……。
頬を赤くしながらモジモジしているエリーを見て心からそう思った。
その後、恥ずかしがりながらメイドの仕事に戻っていくエリーを見てほんわかした後、集合場所である宝物庫に歩いていく。
何やら宝物庫にある国宝級のアイテムやら装備やら俺たちにくれるらしい。まじ太っ腹である。
と、言うことで俺が選んだのは
何やらローブには魔法耐性を上げる効果と魔力を強化してくれる効果が。世界樹の杖には魔法を発動しやすくさせる効果があるらしい。装備しているだけじゃ基本的に分からない。
「おお!智似合ってるよ!」
「そ、そうか?」
なんか潤に言われると恥ずかしいな。
ちなみに潤の格好については俺はノーコメントである。
誰がなんと言おうとノーコメントである。
その後、城の中庭に移動しジョセフさんから訓練内容を聞いた。
前衛系の天職持ちはジョセフさんに、
後衛系の天職持ちは、メルトさんっていうこの国一番と呼び声が高い魔法使いさんである。めっちゃイケメンであの五条といい勝負がーーーってあれ?そういやあいつは?
「訓練に移る前に勇者となった亘をお披露目しようと思う。こい!亘!」
とジェセフさんがいうと、恥ずかしそうに柱の影から出てくる五条がいた。
……………うーわー。
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