第8話
チラッ、と視線を向けると王と騎士団長が驚いたように声を上げ、水晶に触れている人物を見る。
「……まぁ当然だよね」
「まぁ予想通りだよなぁ………」
水晶の前には完璧超人五条亘が水晶を驚いたように呆然と見つめていた。
「……俺が、勇者?」
「そうとも!なるほど……天職がハッキリしたから見えるが、五条殿、貴殿はこの国に舞い降りたどの勇者よりも我が祖先である女神アテナから受け取っている勇者因子がおおい」
「……は、はぁ?」
あまりピンと来ていない様子である。まぁ五条ってあんまりラノベとか読まなさそうだよな。あいつ確かミステリー系が好きだって言ってたし。
なんで知ってるかって?俺が本読んでる時に「君も本好きなんだ」ってめっちゃニコニコ顔で話しかけられたからだよ。今でもたまにクラスメートの目を盗んで今週のオススメミステリー小説とか教えてくるんだぜ?
まぁめっちゃ面白いけど。
「…………」
五条は困ったようにキョロキョロを見渡すと、俺らの方に視線をちらり。
おい、困った時に何故か知らんが俺の方へ視線送るのやめろ。いくら趣味が合うからってお前からの意図は汲み取らねぇし、潤のしか汲み取らねぇ。
あ、バカ。こっち来んな!
「五条殿、貴殿は今からジェセフについて行き、聖剣を抜く儀式をして欲しい」
「エッ」
「ジェセフ、頼んだぞ」
「おまかせあれ。王アテナよ。ほれ、行くぞ今代の勇者よ。メイドも着いてこい」
「は、はい!」
慌てたように返事をする薄い緑色のショートカットヘアーの女の子。なるほど、あの子も中々可愛いな。
「えっ、ちょ!おおかーーーー」
バターン。扉は無慈悲に閉められ、五条はジェセフさんに呆気なく連れていかれた。
後あいつギリギリで俺の名前呼ぼうとしたな?そうしてたらあいつが勇者だがなんだが知らんが、父親直伝のアイアンクローが火を吹くぜ?たぶんジェセフさんに止められるけど。
「それでは天職鑑定を再開する」
王の一言でポカーンとなっていたクラスメート。五条の次に受けるやつのメイドが何か耳打ちすると、焦ったように向かい始めた。
そしてだいたい三分の二が終わり、いよいよ俺たちの番が回ってくる。ここまでで王様が驚いたものは『竜騎士』やら『召喚術氏』やら『剣聖』やらが見つかった。
「よし、やっと俺だな」
「頑張ってね!智!」
「ファイトです智様」
「あぁ」
何を頑張るのかはしらないが、折角応援されたので応えておく。階段を登り、王様の前に立つ。
………こうして立つとなんか威厳みたいな奴が感じ取れて目で見るよりも大きく感じるな。
「………君か」
「……え?」
「いや、なんでもない……水晶に手を当てて、名前を告げると貴殿の天職が浮かび上がる」
利用方法を教えて貰ったため、早速水晶に触る。ふむ、冷たくも熱くもない……ツルツルしてるな。
と、手触りを少しずつだけ確認して、自分の名前を言った。
「……大河智だ」
言うと、青い水晶が輝き始めーーーって何だこの反応!?さっきまで光らんかっただろうが!
「ぐっ!」
「むぅ!?」
俺と王があまりの眩しさに声を漏らし、咄嗟に視界を腕で塞ぐ。一体何が起こってるんだ!?
しばらくその状態のままいると、徐々に光は収まり、次第に光は無くなっていった。
「……な、なんだ……?」
恐る恐る水晶に近づいていく。目を凝らしてみると、そこには王アテナが言っていた通り、文字が浮かんでいた。
大河智
天職:
「………
それなら俺の拙い異世界知識でも知ってる。あれでしょ?スケルトン呼び出したり、死した亡霊の魂を呼び起こしたりするやつ。
たいてい悪役が使ってるよね………あれ?俺悪役扱いされない?なんか急に心配になってきた………。
「ふむ、
お?意外とこの世界では大丈夫なのか?
「一流にもなれば呼び出したスケルトン達は我が一般騎士にも匹敵する強さになる」
「へぇー」
やっぱこっちでも大体の解釈は同じなんだな。
「……………期待しているぞ、初日から勇者メイドと契りを交わした勇者よ」
「………ん?」
階段を降りる際に王が何か呟いた気がするが、振り返る度胸はなかったのでササッと潤へとバトンタッチ。
「それじゃあ行ってくるね!」
「あぁ、頑張れよ」
マジで何を頑張るかは知らんけど。
潤とハイタッチをしてから入れ替わるように俺が席に座った。
「いかがでしたか?」
「
しかも女神アテナの勇者因子のおかげで普通のレア天職よりとワンクラス以上も上なんでしょ?もっと強いスケルトン呼び出したりとかできるんかな。
潤が水晶に手をふれる。先程の俺のような光は出てこなかった。
ほんと、さっきの光はなんだったんだろうな。潤の時は何もおきなーーーーーー
「おお!潤殿は『聖女』であるか!」
「……ん!?」
潤が驚いたような声を出す。そっか、潤が聖女ねぇ……へぇ…………ん?
「聖女!?」
あいつ男だけど!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます