第7話
その後、潤に手を引かれるように椅子へと座らされる俺。隣には潤が座り、俺の左後ろにエリーが控えた。
「ねぇねぇ智。ここで何するか知ってる?」
「ん?……あぁ、お前メイドさんいないから知らねぇのか。今から天職鑑定をするんだとよ」
「天職?」
「簡単に言うと才能だ」
「なるほどね」
潤は俺よりもラノベとか読んでるからな。そういった知識にはめっぽう強いので、少ない説明で理解してくれるから本当に助かる。
「……ということは、この中にいる誰かの天職が勇者だったりするの?」
「はい、その通りでございます」
潤の質問にエリーが答える。
「皆様の肩書きは勇者となりますが、勇者の中の勇者はお一人だけ。勇者因子ーーー女神アテナに一番愛された者だけが勇者となるのです」
「やっぱり?」
「………っていうとやっぱり勇者はーーー」
……まぁあいつしかいねぇわな。
チラッと、俺と潤の視線がとあるイケメンへ向く。そこには真剣そうな顔で女子達と喋っている五条亘の姿。
……あれだな。女子は自分か弱いアピールして五条の気を引きたがってるな。まぁ五条はある意味鈍感だから絶対その意図には気づかないと思うが。
「………やっぱり大河くんだよね」
「逆にあいつが勇者じゃなかったら女神アテナの方を疑うなぁ」
男子に女子にもその性格故に好かれている稀有な存在。俺はあのキラキラオーラは苦手だが、あいつ自身は結構人としてなら好きの方の部類に入る。
その後、潤が何の天職に目覚めるか選手権(二人)でやっていると、後ろのドアがガチャんと開き、昨日も見た王と、立派なお髭がたくましい鎧着たおっさんが現れた。
俺たちの視線をいっせいに浴びても、堂々と真ん中を歩き、昨日と同じ俺たちを見下ろせる場所へ腰を落ち着ける。
「おはよう異世界の勇者達。急な呼び掛けに応えてくれて何よりである」
全員を見渡し、一瞬だけ、俺を見てから視線が止まった。………なんだ?
「それでは、昨日紹介しなかった私の自己紹介をしよう。私の名前はアテナ。アテナ・グラファイト。このグラファイト王国の王様である」
「…………ん?」
アテナ?
首を傾げる。あれ?アテナって女神って聞いてるけど………あれ?
どゆこと?
見渡すと俺の他にもん?ってなっている人がいた。大河もそのうちの一人である。
「ふむ……疑問に思っていることは後で教えるが、今は自己紹介を優先させてくれ。隣にいるのがこの国の騎士団長であるーーー」
「ジョセフだ。よろしくな勇者達」
ガシャン!と鎧を鳴らしながら腕を上げて俺たちに挨拶をする立派なお髭のジョセフさん。見た目的に結構歳いってそうだけどこの人団長で大丈夫なの?
「それでは今から、勇者達には天職鑑定をしてもらう。ジョセフ」
「ハッ」
王様が何やらジョセフさんに指示を出すと、何やらでっかい青色の水晶みたいなものが出てきた。
「これは鑑定晶といい、勇者達の天職を調べるものである。そちらの席から一人ずつこちらへ来るように」
「エリー、説明」
「はい」
「………えっと、智?どうしてさっき王様の名前を聞いて首を傾げてたの?」
「………そっか、潤はあの変態メイドだったから聞いてないもんな………えっとな」
ということで、潤にあの王様とこの国で慕われている女神の名前が同じことを伝えた。
「……なるほどー。確かにそれは不思議だね」
「だろ?ということで、エリー。説明」
「おまかせを」
今水晶に三人目が向かったところを確認してからエリーの方を向く。俺たちは結構後ろの方へ座ったため、順番も最後らへんである。
「まず女神アテナとアテナ王の関係性なのですが、簡単なことです。王アテナの祖先に女神アテナがいらっしゃいます」
「………ん?」
つまり?
「王アテナは女神アテナの孫です。簡単に言うならば」
「「……………………」」
絶句。俺と潤は目も口も開けた状態のまま固まった。
つまり……あの王には神の血が流れているという解釈でよろしいんですかね?
でも、それだけだったら何故女神アテナとあの王の名前が同じということになるんだ?
「アテナという名前は世襲制で、王になった者は女神アテナから名前を貰い受けるということになっているのです。そこに女も男も関係ありません」
「……ご、ごめん智……僕でも想像つかないや………」
「なら俺なんてまだ理解すら出来てないな………」
「ざっくり言いますと、女神アテナは人妻です。今でもたまにこの世界に降りてきているらしいです」
おい女神。
「………なるほど、僕やっと理解が追いついた……智、きっと王様は現人神なんだよきっと」
「言葉の意味は分かりませんが王アテナは、女神アテナの代弁者だと言われています」
「ほら、きっとあの人は国民から神と同格に見てるんじゃない?」
「うーん………」
いや、潤さんや。それを俺に聞かれても困ると言いますかなんと言いますかーーーー。
「おおっ!貴殿が女神の勇者か!」
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