第2話

 ……まぁここで、俺が勤勉だの勤勉では無いだのは、激しくどうでもいい事だ。


 俺は図鑑に記載されているゴブリンの説明を見る。


 ・ゴブリン

 体長約1メートル程の魔物。緑色の肌をしており、腰にただ布を纏っているだけの貧相な体をしている。武器も棍棒のみと、初心者が相手をするのにベストな相手。しかし、ゴブリンの巣では侮るなかれ。


 としか書かれていない。


 いや、そこはなんでゴブリンの巣では侮ってはいけないかの説明書けよ。


「私達の世界では冒険者という職業がありますが、こういったことは先輩に聞けというのが暗黙の了解なのです。失敗して経験を積む。失敗してどの魔物も脅威であるという心を忘れさせないためです」


 と、エリーさんが説明をしてくれた。多分『説明書けよ』って顔してたんだろうな……。


「それに、ゴブリンはこのゴブリンだけではなく、色々な種類が出てきますが………まぁそれは後でいいでしょう」


 ペラッとエリーさんが次のページをめくった。


 次に図鑑に載っていたのはスライムだった。しかし、ドラク○でよく見るあの可愛らしい目と口があるスライムではなく、粘液体のなんかネバネバしているやつだった。


 ・スライム

 粘液の体を持ち、色によって弱点が違うが、共通の弱点として核を一撃で突けば瞬殺できる。しかし、核を突かなければスライムは負けないため、注意されたし。


「他にも、スライムは服を溶かす酸を放ちます。そして、スライムは体液が好みですので、服を溶かしたあと、体液を求めて体をスライムが這います。どことは言いませんが、スライムが体に入り込みますので、これで女性冒険者がトラウマになった例があります」


「………それ、内の女性陣たち大丈夫なのかね……」


 戦争のせの字も知らないお年頃である。しかもエロ同人みたいにやられちゃうんでしょ?この情報はまっさきに潤に伝えて、後ほどそれとなく女子に流してもらおう。


「今日は次で最後です」


 とエリーさんが言ってページをめくった。


「多分、これが皆様の登竜門となることでしょう」


「……あぁ」


 そう、次のページには底なしの精力があるとエロ同人では有名なオークさんがいたのである。


 ・オーク

 緑色の肌をした豚。二足歩行で、前足がまるで人間のような手をしており、武器として斧を持つ。装備は貧相だが、脂肪が鎧の役割をしている。人間の娘を攫い、子を産ませる女の敵。


「人間が嫌っている魔物に関するナンバーワンに君臨するオークです。実力者の冒険者はどんなに疲れていようとオークを攻撃します。敵ですから」


 説明しているエリーさんの声にも怒りが含まれていた。うん、俺もああいう系を見ると胸糞悪くなるから嫌い。もしここで強い力を手に入れたら優先的にオーク倒そう。奴らは絶滅すべきである。


「今日はこれで終わりですが、ここの本は貸し出すことが出来ますので、お借りになりますか?」


「あ、是非お願いします」


 と言ってもこんなに多くはいらないので、とりあえずさっきまで読んでたやつを借りよう。


 折角出したが読まなかった本を丁寧に本棚に戻してエリーさんとともに司書さんの元へ行く。手続きはエリーさんがしてくれたので良かった。


「それでは部屋へ戻りましょう。後ほど夕食を持ってまいります」


「あ、すいません。ありがとうございます」


「いえ、私は智様の専属メイドですから」


 と言って俺を部屋まで送った後に部屋から出ていったエリーさん。


 でも、専属って今日までだったよね?


 不思議に思い首を傾げると、次の瞬間、外からめっちゃドンドンドンッて叩かれた。


「智……智!!た、助けて!」


「…っ!潤!?」


 潤の切羽詰った声が聞こえたので、急いで開けると目に涙を浮かべた潤が抱きついてきた。


「ど、どうした!?」


「智!?ぼ、僕!お、襲われてーーー」


「誰だ!一体誰に!」


 襲われてと聞いた俺はいても立っても居られなくなった。いったい誰が潤のことをーーー


「潤様ー?どこにいらっしゃいますかー?」


 声が聞こえた。横を見ると、メイドさんが来ていた。潤の名前を読んでいるところ、多分今日限りの専属メイドだろうか。


「潤。お前の専属メイドがーーーー」


「だ、ダメだ!智!」


 慌てて俺の口を塞ぐが、メイドの視線がこちらにグリン!と向いた。


 俺は本能的に悟った。ロックオンをされたと。


「あ、潤様ぁ♡こんな所にいたのですねぇ」


「ヒイイイイイイ!!!」


 悲鳴を上げて俺の背中に回り込む潤。俺はそんなに潤の前に出て庇うように立ち塞がる。


 この女はやばい。何がヤバいかは分からんが、とにかくヤバい。可愛い顔して多分考えていることは絶対やばい事だ。


「こ、ここここここのメイドさん!美少年&美少女が好きなヤバい人なんだ!僕が男って分かると僕の貞操を奪おうと!」


「なぜそんな奴が王城のメイドをやっている!!」


「そんなの、王子様を見るためですよ。貴方もなかなか美少年ですけど、潤様ほどではありませんね。さて潤様ぁ♡早く、私達の愛の巣へ行きましょう♡」


「ヒイイイイイイイイイイイ!!!!」


 俺も潤ほどではないが、その瞳を見てめちゃくちゃ恐怖心が出てくる。一応睨み返しているが、多分あの色を失った瞳には潤しか写ってはいない。


 後ろでは潤が産まれたての子鹿のようにガクガクブルブルと震えていた。


 クソっ!ど、どうすればーーーーー

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