第109話 思わぬ来訪者
『今夜はシロちゃん借りるね!』
麗奈姉さん曰く、パジャマパーティーをするらしく泣く泣く琥珀を送り出した俺。今夜は一人で寝ると思うと少し気が重いが、従姉妹達が琥珀を受け入れてくれたってことだし、今夜だけなら我慢もできる。
さて、現在時刻は午後9時。オジサン組は未だに飲んでるし、叔母や母達は久しぶりの再会で色々と積もる話もあるのだろう。そして、そんな中で未だに祖父と父が言い合ってるのだから、むしろ仲良しなのではないかとすら思ってしまう。
それを本人達に言えば更に白熱しそうだが、あのBGMがうるさくなるのは面倒なので言わない。まあ、大抵宿泊期間中の父と祖父の予定は互いに噛み合うようで噛み合わない会話で終わるので気にしたら負けか。
そんな皆が楽しそうな夜。やる事も、やらねばならない事もあるが、なんとなく気が乗らず、祖父母が用意してくれている個室で月を眺めているとドアがノックされた。
……このタイミングで誰だ?
『暁斗。起きてますか?』
「……お祖母ちゃん?」
珍しい来客に驚きつつも俺は返事をすると、綺麗な所作で入ってくる我が祖母。本当に祖母という単語を使うのが難しい人だが、自慢の祖母なのは間違いない。
「母さん達との話はいいの?」
「ええ、それよりも久しぶりに孫とゆっくり話したいと思いましてね。丁度琥珀さんも未来達に連れてかれたようですし」
流石はお祖母ちゃん。なんともタイミングのいいことで。
しかし、琥珀ではなく俺と話ねぇ……琥珀とは夕飯の準備で色々話せたということかな?
粗方の説明はしてあるし、祖母が何の意味もなく話したいと言うことはそうそう無いが、少し引っかかる。
「とりあえず、ジュースでも飲みながら話しましょう。私は久しぶりに飲みたい気分なので付き合って欲しいのです」
そうして持参してきたジュースとお酒をチラつかせる祖母。
お祖母ちゃんがお酒飲むの?俺が知る限り1度も俺達の前では飲んだことないはずだが……
「……分かったよ。本当は俺も飲めればいいんだけどね」
「ふふ、まだ未成年ですからね。暁斗はお酒に興味があるんですか?」
「んー、出来るだけ飲みたくないかな」
前の時に飲んで、嫌いではなかったけどそこまで好きにもなれなかった。ビールは暑い時は美味しかったし、ワインの香りも嫌いじゃなかった。焼酎、ウイスキーはまあまあ?
あ、食前酒にあった果実酒はそこそこ好きだったかも。
まあ、それでも琥珀が居なかったから飲めただけだ。居る今は成人して、付き合いでもあまり飲みたくはない。酒臭い口でキスしたくないし、琥珀と一分一秒でも一緒に長生きしたいのでタバコもお酒も遠慮したいというのが本心だろう。
それと、下手に悪酔いしたり、泥酔して迷惑はかけたくない。
お酒で俺のタガが外れたら……琥珀が危険!性的な意味でも (ガクブル)
「まあ、あまり飲むものでもありませんからね。大切な人が出来たならそれでいいと思いますよ」
バレテーラ。まあ、この祖母にはあまり隠し事は出来ないか。
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