第107話 琥珀と祖母
「琥珀さん、じゃがいもをお願いします」
「分かりました」
皮をむいて下処理をする琥珀。僅かな言葉だけで把握出来るのは、どこかいつも手伝っている暁斗の母親と似ている所があるからだろう。
「ふふ、こうしてお手伝いしてくれると嬉しいものですね」
「あの……お姉さん達は……」
「孫たちは自主的にはしませんからね。娘も教えた時しか作りませんでしたし。一番お手伝いしてくれるのが多分暁斗でしょうか?」
「あっくんが?」
思わず嬉しそうに微笑む琥珀。やっぱり琥珀の思ってる通りなので嬉しいのだろう。
「ふふ、本当に琥珀さんは暁斗のこと好きなんですね」
「ふぇ……!?そ、それはもちろん……」
「幼なじみでしたよね。昔は琥珀さんの話も少し暁斗がしていたようにも思えました」
「そうなんですか?」
「年頃になるとあまり話しては居ませんでしたが、やっぱり本当に好きなんでしょうね。今のあの子はとても幸せそうに、楽しそうに見えました」
そんな風に懐かしむ忍だが、琥珀は首を横に振って言った。
「本当に幸せなのは、私の方なんです。あっくんに助けて貰って……あっくんはいつも私が辛い時に助けてくれる、私の王子様なんです」
「王子様ですか……ふふ、あの子も随分と好かれていますね」
忍は先程、軽くではあるが琥珀の境遇を娘婿から聞いてきた。そんな彼女を助けた自分の孫がどれだけ彼女を愛しているのかも把握出来てしまったのだった。
「だから、私はあっくんのために少しでも色々役に立ちたくて……」
「それだけじゃありませんよね?好きだから、その人に尽くしたいのでしょう?」
恥ずかしそうにこくりと頷く琥珀。そんな琥珀を微笑ましく見ながら忍は言った。
「私も旦那様のために出来ることを探しました。そういう意味では私と琥珀さんは似ているのかもしれませんね」
「そんな……私なんて、お祖母様みたいに綺麗じゃないですし……」
「そうでしょうか?琥珀さんも十分に魅力的だと思いますよ。私の孫が惚れているのですから、内面も外見も好みなのでしょう」
そう言いながら当たり前のように手を動かす忍のスペックに琥珀は驚嘆していた。暁斗の母よりも圧倒的に早くて正確で上手い。だからこそ、少しでも学びたくて琥珀も慣れないながら会話をしつつ作業を進めるのだった。
もちろん、そんな様子を見ていた忍は微笑ましく思っており、空いてる時間に料理を教えることを自分から提案していたのだった。それほどに、忍も孫の恋人を気に入ったのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます