第106話 琥珀の事情

「じゃあ、お祖母様とご飯作ってくるね」

「うん、よろしくね」


琥珀を笑顔で見送ってから、俺はリビングに向かう。すると、大人連中だけが集まっており、重苦しい雰囲気になっていた。いつも通りのやり取りをしていたはずの祖父までそうなのでなんとなく察して俺は父さんに話しかけた。


「琥珀のこと、話したんだね」

「今しかないと思ってね。お義母さんにも話しておいたから」

「そう、ありがとう」


夜にはお酒が入ってるだろうし、既に酔ってる人もいるが、酔いが浅いからか話を聞いてムスッとした顔をしていた。


「暁斗。こやつの話本当なのか?」


お祖父ちゃんからそんなことを聞かれる。嘘ではないだろうが、婿の言うことだし孫にも聞いたのだろう。


「琥珀の境遇に関しては多分、父さんの説明通りだよ」

「そうか……」


ギリッと歯を食いしばる祖父。いつもの温和な表情すら保てない気持ちは分からなくはない。


「それで?あの子のことどうするつもりなの?」

「どんな手を使っても守り抜く」

「できのか?」

「幸いなことに裏の伝手が出来たからね」


叔父達は知らないだろうが、浪川の家の力は大きい。個人的なコネも出来たしやれないことはない。


「暁斗よ。無理はするんじゃないぞ」

「ありがとう、お祖父ちゃん。でも、好きな人を守りたいんだ。多少は頑張らないとね」

「……そうか。何かあったらワシに相談するんじゃぞ?」

「うん、そうするよ」


実際に何かを相談するかは分からないが、祖父も叔父達も特に反対意見は無さそうでホッとする。まあ、別に反対されても琥珀を守ることに変わりはないが、理解がある方が助かるからね。


「そにしても、お前が付いていながらこの体たらくはどういうことじゃ?」

「お義父さん、僕もそこまで勘付けるほど鋭くは……」

「誰がお義父さんか!」

「いえ、ですから……」


そして、調子を取り戻したかのようにいつも通りのやり取りを始める祖父と父。叔父たちも飲みを続けたので部屋を出て従姉妹達の元に向かう。未来姉さんとか話せそうな人には話しておくことにする予定だ。


まあ、話さなくても今日の感じだと皆琥珀のことを気に入ってくれたみたいだし、大丈夫だろうけど、一応ね。


そういえば、従姉妹達は祖母の手伝いなんて進んでやらないから、琥珀と祖母は今は2人きりか。祖母的にもああして進んで手伝ってくれる人がいるのは嬉しいだろうね。俺的には琥珀ともっと一緒にいたいが、琥珀も楽しそうだし仕方ない。今出来ることをやらないとね。


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