第104話 多恵叔母さん

「暁斗、多恵が来たようなので一緒にお願いしますね」


慎二と遊び終わると、またまた祖母からお声がかかる。お祖父ちゃんの代わりなのだろう。今現在も、我が祖父と父は仲良く言い合っており、この家のBGMと化しているので仕方ない。


他の叔父たちは既に飲み始めており、役にはたちそうにない。そもそも、叔父達は婿なので祖母としては出来れば純粋な一族の男手が欲しいのだろう。古い家特有のしきたりとまではいかなくても、マナーのようなものだ。


琥珀との触れ合いが恋しいが、仕方ないので祖母に従って玄関に向かうと、今泉家四姉妹の末っ子である、多恵叔母さんが子供達とそこにいた。


「暁斗くん、お久しぶりね」

「多恵叔母さんもお元気そうで」


実の所、祖母の遺伝を1番色濃く受け継いだのは多分この人だろうと俺は思う。姉である我が母と叔母もかなり若作りだが、この人は下手したら未成年にも見えそうなほど童顔なのだ。多恵叔母さんの旦那さんの昴叔父さんがロリコンと疑われるのも納得してしまう程だ。


「暁斗兄さん、やっほー」

「ふふふ、今日こそ暁斗さんを出し抜くんだから!」

「愛衣も麻衣も元気そうだね」


確か今年で小学五年生だったかな?双子の姉妹の愛衣と麻衣。姉の愛衣はのんびりした感じで、妹の麻衣は大人しく見えて元気。双子で見た目がガチでそっくりなので、たまにイタズラで入れ替わりとかするんだけど、それを俺が一発で見破るから面白がって挑んでくるのだ。


「あっちゃん、あそぼ」

「あーう」

「おお、希望(のぞみ)も千穂も大きくなったね」


今年で3歳の三女希望と、四女で少し前に生まれたばかりの千穂もしばらく見ないうちにおおきくなったものだ。


「ねえねえ、暁斗くん」


子供たちといつも通り、挨拶をして落ち着かせて祖母に任せていると、こっそりと近づいてきた多恵叔母さんがにこりと笑って言った。


「暁斗くん、女の子連れてきたんだよね?ガールフレンド?」

「ええ、まあ、恋人、彼女、婚約者……呼び方は多岐に渡りますね」

「おー、あの小さかった暁斗くんに恋人かぁ……私もすっかり歳を取ったものだね」


そう見えないのが、この人の恐ろしいところだろう。しかも、自分ではオバサン気分を満喫しているので、なんとも言えない。若いって言えば、あまりいい顔しないのに、少し老いた?とか老けた?とか言えば何故か嬉しそうに笑う。いや、比喩ではなく、本気で喜んでいるから不思議だ。


あれかな?早くダンディーな大人の男になりたいとかいうのと似たような感情なのかな?まあ、俺は琥珀がカッコイイと思えるように老けたいけどさ。


うん、やっぱり琥珀が最優先だな。よし、夕飯の準備まで琥珀を攫って独り占めしよう。




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