第99話 亜希伯母さん

「おーい!」


楽しく談笑していると、玄関からそんな声が聞こえてきた。その声だけで、誰か分かってしまった。


「お祖母ちゃん」

「ええ、あの人は……まだ、じゃれ合ってますね。暁斗一緒に来てくれますか?」

「分かったよ。琥珀は母さんとのんびりしてて」


頭を撫でてそう言うと可愛らしく頷く琥珀。本来出迎えるべきお祖父ちゃんは父さんとまだ不毛なやり取りをしているので、俺が代わりに出ることにする。


「おー!暁斗久しぶりだねぇ!」


玄関に行くと、元気そうな中年の女性がいた。その人こそ、俺の伯母で、今泉家の長女である、今泉亜希だ。


「久しぶり伯母さん。未来姉さんと結女姉さんも久しぶり。陽菜乃の大きくなったね」


そして、その後ろにいた2人の女の子、長女の未来姉さんと、次女の結女姉さん。そして伯母さんが抱えている三女の陽菜乃がそれぞれいた。


未来姉さんは今年で高校三年生、結女姉さんは高校一年生、そして陽菜乃は1歳にまだなってないくらいだ。随分と年の差のある姉妹だが、これは2人の娘が大きくなって寂しくなったから伯母さんが、頑張った結果であろう。


「……ん、暁斗も元気そう」

「中学生だったよね?勉強大丈夫なの?」


少し無口な未来姉さんと気さくで話しやすい結女姉さん。最初がこの2人で助かった。


「ところで、健二兄さんは?」

「……いつも通り。ブラック企業に魂を売った社畜」


社会人である健二兄さんは、今回も欠席らしい。社畜乙。


「皆もう来てるの?」

「いや、まだ俺たちだけだよ。あ、後、俺は今回彼女連れて来たから」

「え!?暁斗が彼女!?見たい見たい!」

「……妄想じゃないの?」


何気に酷い未来姉さんだが、疑われても仕方ない。その手の話がこういう席で出たことないもの。


「お母さんは知ってた?」

「ん?おお、もちろん!でも、何か色々あるんだろ?」

「その辺は後で話すよ。琥珀はいい子だから虐めないでよ?」

「おー、じゃあ陽菜乃の面倒でも頼むか!久しぶりに子育てから解放されたいしな!」

「それなら、私が見ますよ。可愛い孫ですから」


普段の子育ての大変さを知ってるからか、或いは孫が可愛いという本音なのか、やんわりとそんなことを言ってくれるお祖母ちゃん。まあ、琥珀も可愛いものは好きだし、赤ちゃんを見れば満足だろう。


いつかは俺も琥珀と赤ちゃんを作りたいものだが。


「暁斗!早く彼女紹介してよ!」

「分かってるよ。未来姉さんもいい?」

「……うん。見たい」


そうして俺は2人を先に琥珀の元に連れて行くのだった。



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