第98話 大人っぽさ

「お義父さん、お久しぶりです」

「誰がお義父さんじゃ!」

「いえ、義理の父親ですから」

「お前にお義父さんなどと呼ばれる筋合いはない!」


琥珀にはデレデレしてても、やはりというか、娘を奪った男には複雑らしくいつも通りのやり取りをする2人。毎年、会う度にこうなので、もう見慣れている祖母と母は楽しそうに談笑していた。


「琥珀?」


そして、琥珀はそんな祖母をぼーっと眺めていた。俺の問いかけにハッとしてから照れながら琥珀は言った。


「ごめんね、お祖母様凄く動きが綺麗だなぁって思って」

「まあ、気持ちは分かるよ」


日常動作の一つ一つの動きに品があり、凛としてるので孫としても凄い祖母だとは思う。琥珀的には尊敬の念が強いのだろう。


「私も、ああいう風に大人っぽくなりたいなぁ……」


ここで膨らんでる胸に手をあてる仕草は反則だと思う。そこは既に大人の階段を登りつつあるのだから、気にしても仕方ないが、ここで俺がベッドに連れ込んで本当に大人の階段を登らせたら間違いなくゲスなのでそんなことはしない。


「俺は可愛い琥珀も好きなんだけどね」

「むぅ……嬉しいけど、複雑だよ……」


そう言いつつ嬉しそうなので、やっぱり琥珀は今のままでも十分可愛いと思う。まあ、大人になって祖母みたいな落ち着きが出たらそれはそれで魅力的だけどね。


そんな風にいつも通り琥珀と軽くイチャイチャしてると、いつの間にか祖母がこちらを見ていてくすりと笑っていた。


「本当に仲睦まじいのですね。微笑ましいです」


その言葉に顔を真っ赤にする琥珀を愛でたくなるが、俺はその前に聞くことを聞いていた。


「ところで、他の人はまだ来てないの?いつもならもう着いてそうだけど……」

「亜希と華夜はそろそろ着くかもしれませんね。多恵の所はもう少し後でしょう」


亜希と華夜とは、母の姉にあたる存在だ。多恵は妹。四姉妹の三女が母なのだ。つまり俺には母方の叔母が3人いるのだ。全員結婚しており、子供がいるのだが、ほとんど女の子だったりする。他にも親戚が来るのだが、俺が主に話すのはそのメンバーが主だったりする。他のメンバーは夜にお酒で盛り上がって翌日寝込んでから旅立つので、あまり接点がないのだ。


まあ、親戚が多くなれば、自然と接点が薄い人も出来るもの。叔母と叔父とはそこそこ仲良しだし、従姉妹とも仲良しなので問題はないだろう。


「琥珀さんはお料理が得意だと紗季に聞きました。後で一緒にお料理しませんか?」

「えっと……いいんですか?」

「もちろんです。暁斗が嫉妬しないなら」

「嫉妬は無くはないよ。可愛い彼女だし。ただ、お祖母ちゃんと料理なら安心して任せられるからね」

「では、決まりですね」


少し嬉しそうな琥珀。まあ、お祖母ちゃんは料理も得意だから、色々学べるだろ。そんな感じで俺たちは和やかに過ごすのだが、そのBGMが祖父と父の不毛なやり取りなのは言うまでもないだろう。





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