第82話 暗い話

帰ってきた父さんは母さんから遊園地行きの話を聞いてびっくりしつつ苦笑していた。その反応で母さんの独断だったことが判明したが、まあ、母さんに甘い父さんなら断るわけないし、琥珀も楽しみにしてるのでそこはスルーでいいだろう。

そんな中、琥珀がお風呂に入ったタイミングで父さんが俺に話があると呼び出していた。


「それで?どうかしたの?」


父さんの表情を見るにあまりいい話だとは思えなかったが、琥珀が風呂から上がるまでに済ませるべきだろう。


「実はね、琥珀ちゃんの親戚筋にいくつか連絡が取れたんだよ」

「具体的には?」

「琥珀ちゃんの母方の祖父母、そして叔母だね」

「父方はどっちも全滅だった?」

「うん、そうだよ」


この話を聞いても俺は特に驚いてはいなかった。何故なら、それも知っていたからだ。例えば前の琥珀を助けられる人が親戚に居なかったのか?まあ、結果としては不可能としか言えなかったが。


「琥珀ちゃんの祖父母は少し話しただけだけど、孫である琥珀ちゃんのこと嫌ってるみたいだね。叔母も同じ」

「理由は分かる?」

「本当にくだらない理由だよ。幼い頃に会った琥珀ちゃんが礼儀がなってないってさ。あと、誤って花瓶を割ったらしい」


ちなみにこれらは当時琥珀が3歳の頃の出来事だ。物心つく前後の子供の行動だが、胸糞悪いのはそれらは本当に間違っての行動で、なのに琥珀の祖父母はそれを厳しく叱りつけて暗い部屋に閉じ込めてお仕置きしたそうだ。

ただ、その後怯えてる琥珀がムカつくからと殴ったことは許せない。


「叔母の方は、単純に琥珀ちゃんの母親を嫌ってるみたいだね。だから、その子供である琥珀ちゃんも嫌いってさ」


父さんですらため息をつくレベル。前に会った時には本人に色々と嫌みやらを言ったらしい。本当に……何故琥珀ばかりがこんなに不幸にならないといけないんだ?琥珀は何も悪いことしてないのに……本当にこれらを前の時に知った時はこの世を呪ったものだ。


「まあ、結論だけど……琥珀ちゃんは成人するまでは家族、親戚から離した方がいいだろうね。向こうにも念の為琥珀ちゃんとは接触しないように釘を刺しておいたから」

「ありがとう、父さん」

「いいよ。暁斗の好きな女の子のためだからね。それに琥珀ちゃんはもう、僕らの家族だからね」


そう微笑む父さん。家族、親戚はアテにはならない。それが改めて分かったが、やはり琥珀を守るためにはもう少し出来ることをする必要があるかもしれない。


まあ、それらはある程度分かっていた事実。なので、この話は絶対に琥珀にはしないでおいて、明日の遊園地を楽しむとしよう。琥珀にとっては本当に久しぶりの遊園地だろうしね。




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