第35話 テニス部
「あの……見学いいですか?」
休憩中の部員さんにそう声をかけると、その部員さんは俺と琥珀を見てから、ポンと手を叩いてから言った。
「もしかして、君が噂のナイトくん?」
「噂?」
「運動部で結構有名だよ。彼女連れの運動神経いい子が騎士みたいに女の子守ってるって」
なんだその噂……まあ、でも先輩達への牽制には悪くないか。
「見学しに来たんですが……大丈夫ですか?」
「女子の方だよね?いいと思うよ。少し向こうに話を通して――」
「いえ、男子の方です」
「男子?ウチにかい?」
「ええ、まあ」
驚いたように目を丸くしてからその人は微笑んで言った。
「いいよ。とはいえ、うちは人数が少なくてね。あまりちゃんとテニス出来るわけじゃないけどね。男子は実績も無いし、土日も女子にコート取られちゃうから」
確か女子は団体も個人もかなりの実績があったはず。そうなると悪くない条件か……
「俺も事情があって私用を優先するかもなので、構いません」
「そうなの?ちなみにテニス経験があったりは……」
「しませんね。何度か遊びでやった程度です」
「なら、どうせなら僕と少し試合でもしてみる?」
チラッと琥珀の方を見ると可愛らしく微笑んでいたので、カッコつけるには丁度いいかもしれないと頷く。
「決まりだね。じゃあ、ラケット貸すから、準備運動してコートに入ろうか。あ、僕は3年で部長の清水って言います」
「1年、今泉です」
「今泉くんね。彼女さんは近くで見学でいいのかな?」
「はい、お願いします。琥珀、じゃあ少し待っててくれるかな?」
「うん、頑張ってね」
そんな可愛い応援に応えるために入念にストレッチしてから借りたラケットを持ってコートに入る。懐かしいボールの感覚とラケットに感じる少しの違和感。多分ちょっとラケットが大きく感じるのかな?
そんなことを思いながらトスをあげる。いい感じになった所をジャンプしてそのままセンター狙いで打つ。バシン!と軽快な音を立ててボールはキッチリ得点エリアに入ってそのままエースになったが……思わず手を握って感覚の違いを実感していた。
(やっぱり体が違うと、思ったよりスピード出ないもんなんだなぁ……)
インパクトの手応えが全然違った。まあ、でも中学生レベルなら大丈夫そうかな?その後も立て続けにエースを決めて感覚を確かめる。他の部員さんとも軽くやってみて、サーブは一先ず通用することは確認できた。
それに、琥珀も俺の勇姿に頬を赤く染めていたから悪くない出だしだろう。
「驚いたよ……あんなに速いサーブ打てるんだね」
「いえ、彼女の応援がなかったら打ちませんよ」
キョトンとしてから、部長さんはくすりと笑って言った。
「やっぱり面白いね。ウチに入らないかな?彼女さんとの時間を作るのに悪くないと思うよ」
「じゃあ、お願いします」
そうして、俺は条件的に良さそうなテニス部に入るのだった。なお、可愛い可愛い琥珀たんは、タオルを持ってきていたのか取り出して控えていたので、本当に気が利くいい嫁だと関心するのだった。流石俺の嫁!
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