第28話 朝の楽しみ

ブーブーっと携帯が振動する。それが目覚ましの合図だと分かって俺の意識は覚醒する。時刻は午前2時を少し過ぎたところだろう。まだ夜も明けきらないうちに目を覚ます。


「うぅん……あっきゅん……」


――そして、この可愛い寝言に悶えて完全に意識は覚醒する。最近は添い寝の回数が増えてこうして琥珀が隣で寝てることも多くなってきたので、起こさないようにベッドから出てとりあえず寝てる琥珀の写真を撮ってから支度をする。


ジャージに着替えたら、軽くストレッチをしてから静かに家を出て仕事場に向かう。新聞配達のバイトのだ。


「お、おはよう、暁斗くん!いつも早いねぇ!」

「おはようございます。このバイト楽しいですからね」

「はは、物好きだなぁ」


オジサン達に挨拶をしてから、大量の新聞を自転車を借りて配達していく。結構な量だけど、俺としてはいい運動になるから助かる。元々運動は嫌いじゃない。


こうして体を鍛えるとなんとなく安心するというのはある。


それに、今は明確な目標があるから楽しいのだと思う。そうして配り終わる頃にはだいたい5時過ぎくらいになっているので自転車を返してから、急いで自宅に戻る。


シャワーを浴びて汗を念入に流してから、なんとかギリギリでベッドに戻る。別に二度寝をしようというわけではない。俺の目的はただ1つ。


「すぅ……すぅ……」


こうして、安らかに眠る琥珀を眺めることにある。早寝早起きなんて何の得もないと昔なら思っただろうが――この可愛い寝顔を見ればそれが嘘だとすぐに分かる。


イタズラでつんつんっと頬っぺを触ってもくすぐったそうにするだけの可愛い彼女に俺は悶えまくっていた。


(可愛すぎんだろうがよぉぉぉぉぉ!!!!!)


本当に朝からの疲れが吹っ飛ぶ勢いだ。そうして、しばらく琥珀の可愛い寝顔を堪能していると、琥珀の携帯のアラームが鳴り始めた。


(ここだ!)


俺はそれを合図に今度は目を瞑って寝たフリをする。ややあってから、隣で琥珀が起きる気配がある。少し早めなのは、準備と母さんの手伝いをするためなのだろう。本当に真面目で可愛い彼女だ。


「あっくん、おはよー……寝てるかな?」


ツンツンっと俺の頬っぺにイタズラする琥珀。薄目で琥珀の行動を確認すると、キョロキョロと周りを見渡してからそっと――俺の頬におはようのキスをした。その行動に恥ずかしそうにしてから、部屋を出ていく琥珀だったが……俺はそれを見送ってから布団の中で1人悶えていた。


(フォォォォォォォ!!!!可愛すぎかよォぉぉぉぉ!!!)


もうね、恥ずかしそうおはようキスする琥珀たんマジエンジェル(キリッ)。このために寝たフリをするのが楽しくて仕方ない。そんな感じで俺は早起きを満喫するのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る