第26話 彼女のためなら

キーンコーンカーンコーン。そのチャイムと同時に席を立つ。待ち待った休み時間。つまり琥珀に会える時間だ。


「あー、今泉。お前放課後少し時間いいか?」


すぐさま教室を出ようと準備していると、先程まで授業をしていた担任にそう言われる。ふむ、まあ俺も話があるからいいけど……


「分かりました。ただ、彼女を待たせたくないのでなるべく手短でお願いします」

「まあ、それはお前次第だが……男女の交際に文句は付けたくないが、節度は持てよ?」

「はぁ……先生。俺がそこいらの不純な性欲を持て余した若者に見えますか?言っときますが俺は彼女以外を抱くことは出来ませんよ」

「お前……そんなキャラなのか?」


呆れる担任を放っておいてそそくさと教室を出る。本当はダッシュで琥珀のクラスに向かいたいけど、教職員からの評価はある程度確保したいから我慢して早歩きをする。


「お、桐生さーん。彼氏さん来たよー」


琥珀のクラスに着くと近くにいた女子がそう琥珀に声をかける。クラスメイトと軽く雑談をしていたのだろうか?そこそこ仲良くなれていてホッとしてから軽くクラス内を観察しておく。


「あっくん♪」


すると、我がマイエンジェル……琥珀たんがめちゃくちゃ嬉しそうに近づいてくるので俺は微笑んで言った。


「クラスメイトとは仲良くなれそう?」

「うん、あっくんのお陰だよ」

「そっか。授業はどう?」

「ちょっと、ノート取るの遅れちゃって……」


初日だし、ミーティングと軽い内容しかやってないけど、やっぱり琥珀的に少しペースが早いのかもしれないな。


「なら、帰ったら一緒に予習と復習しておこうか」

「いいの?」

「もちろん。琥珀と勉強なんて久しぶりだし楽しみだよ」


小学校低学年の頃はたまに宿題を一緒にやってたけど、その頃から人よりゆっくりな琥珀に教えるのは楽しかったなぁ。俺だってそこまで勉強は得意じゃなかったけど、琥珀に教えたくて家ではかなり頑張ってた気がする。


まあ、今は琥珀を失ってから空虚に過ごした頃の知識があるから高校までならなんとかなるとは思うけどね。


「あっくん、本当に優しくてカッコイイ……」

「琥珀は俺の大切な彼女だからね。それくらいは当然だよ」

「うん♪」


そうか、面倒だと思ってた学校での勉強もこういう時に役に立つのか。琥珀とのイチャイチャに幅を持たせるためのアイテムとして使えればいいのかもしれない。


そうして、クラスメイトとの交流の邪魔にならない程度に琥珀の元に通うことにする。それと同時にクラス内の雰囲気とか状況も把握しておいて最悪に備えるようにしておくことも忘れない。


何事も準備は大切だしね。



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