第25話 見せつけてんのよ

「じゃあ、また休み時間に来るね」

「うん……」


琥珀のクラスまで来てそう言うと少しだけ寂しそうな琥珀。気持ちは痛いほど分かるのでこのままお持ち帰りしたいところだが……ぐっと、我慢してポンポンっと優しく頭を撫でて言った。


「何かあったらいつでもおいで。絶対に助けるから」

「あっくん……やっぱりあっくんカッコイイ……」


微笑んでから、コツンと軽くおでことおでこを合わせる。キスまではいかなくてもこのくらいならセーフだろう。なんとなくくすぐったい感触と、顔の近さに顔を赤くする琥珀をクラスメイトの女子に任せて俺はなんとかその場から足を動かしてクラスに向かう。


「お、暁斗おはー。また彼女のところか?」

「おはよう川藤。まあね」

「本当にお前変わったなぁ……彼女のどこに惚れてんの?」


もちろん全部さ。でもここは……


「教えないよ」

「んだよ、ケチだなぁ」

「お前がそれで琥珀に興味を持ったら困るからね。友人を亡くすのは悲しいことだしね」

「さては貴様闇討ちする気だな!」


鋭いヤツめ。


「てか、桐生なんて別に好みじゃねぇっての――って、おい、カッターを仕舞えって」

「ああ、悪い。ハサミの方が良かった?」

「違う!刺す武器のチョイスじゃない!」

「贅沢だなぁ、あ、ところでこないだ漫画でボールペン1本で人を殺すシーンがあったんだけど……」

「助けてぇ!親友に殺されるぅ!」


そんなアホなやり取りをしていると、クラスメイトの女子が俺に話しかけてきた。


「ところで、今泉くんは彼女とどこまでいってるの?」

「ははは、人に教えると思う?」

「えーいいじゃん。教えてよー」

「なら、交換条件。俺の彼女と話す機会があったら仲良くしてあげて。内気で優しいから人付き合いとか苦手なんだよ」

「ん、おけ〜」


ふむふむ、悪くない出だしだ。今話しかけてきたクラスメイトの女子はこのクラスの女子のリーダー格の新井という女子生徒なんだけど、彼女が琥珀と仲良くなれば自然と他の女子とも友達になれるだろう。


あとは、余計なことを吹き込まないように牽制しつつ、悪い虫避けをしないとね。琥珀が俺のものだというアピールはそこそこしてるけど、それを奪おうとする馬鹿がいれば要注意。


と、なると同学年の次に警戒すべきなのは……上級生。まあ、これは部活の時にでもなんとかするとするか。そんな感じで俺の方の仕込みは思ったよりスムーズに進んだ。あとは、琥珀のクラスだけか……まあ、それも早いうちに決着をつけて琥珀が過ごしやすいようにしよう。


にしても……少し離れるだけでこんなに辛いってなかなか重症かもしれへんな。




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