第12話 添い寝

ソフレというものを知ってるだろうか?添い寝するだけの男女の関係のことを指すらしいが……俺としては誰とも知らない人と添い寝なんてしたくないと思っちゃうんだよね。でも例外はある。


「えへへ……あっくんの匂いだぁ……」


嬉しそうにそう隣で呟く琥珀。俺なんかの匂いでここまで喜ぶのは琥珀くらいだろう。本当に可愛いヤツめ。


「ねえ、あっくん」

「うん?なに?」

「えへへ……あっくんのお顔近くてドキドキするね」


………あかん。俺は今非常に理性を試されてる。そう、これは神からの試練なのだろう。このまま琥珀を襲うことは可能だ。だがそれをしたら琥珀の好感度はおそらく下がる……まあ、もしかしたら何をしても受け入れてくれそうではあるけど、でも、ゆっくり大切にしたいのだ。


そうなると残るのはファーストキスを奪うという選択肢だが……これも雰囲気を作ってからにしたい。なるべくファーストキスは印象に残るように。俺という存在をもっと根強く刻み込むことが大切なのだ。


でも、琥珀が涙目で俺に「あっくん……」っと、懇願するのを想像すると色々辛抱堪らなくなりそうで怖い。まあ、頑張って耐えるけどね。


「ねぇ、あっくん。もっと近づいてもいいかな?」

「うん。もちろんだよ」


ちょこちょこと俺に近づいてくる琥珀。でも、まだ少し恥ずかしいのかちょっと距離がある。それを俺は一気に近づけてから琥珀を抱きしめた。


「わぷ……あ、あっくん……?」

「ごめん。嫌だった?」

「うんうん。嬉しいけど……ちょっと恥ずかしいかな」


えへへと笑う琥珀。照れながらも嫌じゃないとか本当に天使か。やっぱり琥珀は天使様の生まれ変わりなんだろう。うん。


「ねぇ、琥珀」

「なあに?」

「明日も一緒に寝ようか」

「いいの?」

「うん。琥珀が寝たい時は傍にいるよ」


さり気なく手を繋ぐと、琥珀は驚いたようにしてから、俺の手を優しく握り返して微笑んで言った。


「あっくんの手凄く安心する……」

「琥珀の手はすべすべて綺麗だ」

「そ、そうかな?」

「うん。あと、可愛い」

「はぅ……!」


顔を赤くする琥珀。もしかして可愛いってストレートな単語とかに弱いのかな?やっぱりべた褒めして涙目に……いやいや自重しよう。俺の理性が死にかねない。


「あ、あの………あのね、あっくん」

「なにかな?」

「……だいすき」

「……うん。俺も琥珀のこと大好きだ」

「はぅあぅ………」


自分で言っておいて照れるとか本当に可愛すぎか。いやもう、うちの琥珀さんはマジで可愛すぎるよ。本当にこのまま食べちゃいたいくらいだが……うん、頑張って今夜は耐えるさ。


そんな風にして琥珀と初めて添い寝した感想は非常に柔らかくていい夢が見られましたとさ。前は琥珀が死ぬ前に見せたあの笑顔でほとんど眠れなかったのに……本当に久しぶりに快眠だったと思う。あと、寝言で俺の名前を呟く琥珀が最高に可愛かったよね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る