第4話 初日のインパクト

琥珀の母親にもすぐに電話すると予想通りあっさりと許可してくれたのでとりあえず一安心する。これで琥珀を家で保護することが可能になった。


「あっくん……あの……」

「ん?どうしたの?」

「あのね……私は嬉しいけど、皆見てるけどいいの?」


なんの事か一瞬考えてからすぐに繋いでる手のことだと気づいた。恥ずかしいのかちょっと頬を赤らめてる琥珀。本当に可愛いと思いながら俺は微笑んで言った。


「いいんだよ。むしろ見せつけてるんだから」

「え……?」


キョトンとする琥珀。確かにこの多感な時期に、しかも入学式に2人で手を繋いで登校とか普通に考えて目立つが、こうして初日にインパクトをつけておくのが重要なのだ。それに琥珀は可愛いから悪い虫がつかないように気をつけないといけないしね。


「あら、遅かったわね暁斗――って、あらあら、まあまあ!」


校門前で待っていた母さんが俺と琥珀を見て嬉しそうに微笑む。うん、予想通りのリアクションありがとう。


「母さん、俺たち付き合うことになったから」

「まあ!本当に?」

「は、はい……あの、ふつつか者ですがよろしくお願いします」


ぺこりと生真面目に挨拶をする琥珀。そんな琥珀を愛しそうに抱きしめて母さんは言った。


「嬉しいわぁ♪これからも暁斗のことよろしくね琥珀ちゃん」

「わぷ……は、はい……」

「あと、今日から家に住むことになったからそれもよろしく。琥珀の両親の承諾は得てるけど、詳しくは帰ってから話すね」

「あらあら、それならお母さんお邪魔にならないように先に行ってるわね」


そう言いながら一足先に体育館に向かう母さん。予想通りあっさりと受け入れたのでこれで荷物さえ運べば琥珀を完全に家族から離せる。


「あっくん。クラス一緒だといいね」

「だね。でも離れてたら休み時間に絶対に行くから待っててくれるかな?」

「うん、あっくんを待ってるよ」


ニコニコと笑う琥珀。あーヤバいなぁ。本気で可愛すきで辛い。このクラス分けで俺と琥珀は別クラスになってしまう。一学年6クラスあるからそのうちの俺は6組、琥珀は2組と距離があるのだ。現に前はそのせいでほとんど会えなかったし。


それになんとも最悪なことに同じ小学校からの琥珀の友人はほとんど別の中学に行ってるので本気で琥珀は孤立してしまうのだ。だからこそ、琥珀を守るために必要なのは俺が執拗いくらいに琥珀の元に通うことと……そして、琥珀のキャラを固定させることだ。


だからこそその伏線のために2人で目立つように手を繋いで登校したのだ。これで少なくとも内気な琥珀が話しかけられるネタは作れる。さらに女子は恋バナが好きだから自然と琥珀は彼氏持ちの女子としてそれなりの地位を確立できる。


そこに俺が通って皆から色々聞かれて惚気けてくれれば悪い虫もつかないし一石二鳥。まあ、そう上手くいかなくても、俺のクラスでも一応手は打つ予定だ。


そう、救おうと思えば救えるんだ。やり方さえ間違えなければ。大切なのは常に先を見ること。琥珀をいじめてた奴らのことも調べたが、内気な琥珀の反応を楽しんでいた節がある。おそらくファーストコンタクトをミスらなければそのリスクは回避できる。


まあ、それが無理でも手はいくらでもあるし、仮に琥珀をいじめる連中が現れたら……今度は俺自身の手でそいつらを地獄に落としてやるさ。


俺の琥珀に手を出すという愚かさを身をもって知るといい。


「〜〜〜♪」


そんなことを考えてるとは知らずに俺と手を繋いで鼻歌まじりに歩く琥珀は本当に天使だと思うよ。やっぱり琥珀大好きだわ、マジで。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る