第5話 虫売り

夏休み。

わたしは朝4時に起き、近くの山や林に自転車で繰り出し、カブトムシや

クワガタムシを採り、家から2キロほど離れた青果市場に売って小遣いを

増やしていた。


カブトオス   20円

カブトメス   5円

ノコ     10円

クワガタメス   3円

ミヤマクワガタ 20円

オオクワガタ  40円

ヒラタクワガタ 30円


値段は日によって違ったが、だいたいこのくらいのレート。


次に透明の容器(3円)を必要個数だけ買い、ムシの種類ごとに小分け

して出荷。


1日1000円程度稼いでいた。




ムシの採り方は、主にクヌギの木を横蹴りして、高いところにいたムシを

振動で驚かせて地面に落とす方法。


多いときは10匹近く落ちてくる。


落ちてから30秒ほどで虫が動き出すので、それまでに素早く見つけて

大きなスポーツバックにポイポイ放り込む。


朝8時くらいになると、バッグはそこそこの重さになり、ムシの動く音や

ハサミを鳴らす音で一杯になるので、ムシ採りを切り上げていた。



ある時、同じようなバイトをしている大学生が近寄ってきて、20センチほどの

ミヤマクワガタをくれた。

見たこともないようなサイズだったので、興奮してなんでですかっ?と聞くと

もう寿命みたいで、ほとんど動かないんだよ。でも珍しいでしょ?と言って

掌にのせてくれた。


ゆっくり動くミヤマクワガタだった。





家に帰ってスイカをあげたのだが、元気にならず2日ほどで動かなくなった。

せめて自然に戻してあげたほうが良かったかも、と申し訳ない気持ちになり、

庭の隅にお墓を作り、埋葬した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る