14話 室戸相撲大会


住職 「なんと! 六助のヨメは棄権したのか?」


小坊主 「はい」


住職 「家老様? 準決勝のおいもの相手がいなくなりました…どうしましょう?」



家老 「全ての一回戦が終ったら、ここに見物に来ておる、室戸の村人から集えばよい。 六助のヨメが辞退した今、だれか参加希望者も出るだろう」



 次の対戦は「若頭」vs「五助」


 若頭の登場に!

 室戸の村中の女や子供が黄色い声援を!


村の子供達(男女) 「おにいちゃん!がんばってー!」

村娘達 「若頭ー!」

おなす 「きゃー! 抱きしめてー!」

おいも 「勝ってー! 婚儀してー!」

老婆 「アタシがもう少し若けりゃね~♪」



 一方…


 若頭の対戦相手「五助」が登場!


 五助の応援は…


五助の父 「五助! がんばれよ!」

五助の母 「怪我しないようにね!」


 両親の二人だけ…


五助 「別にいいぜよ。 今は「おとう」と「おかあ」の二人だけで。若頭に勝てば…村中の女がワシのコトに惚れ…そして、村の男達や子供も、ワシのコトを尊敬するんじゃ」


 その時!


おさご 「五助さん! がんばってください!」


 おさごの声が…

 五助に力を…!


五助 「おさご!? おさごに応援されて…負けてたまるもんか!」



 試合開始の時間!



高僧(行司) 「時間です!」


 若頭と五助は塩をまき、

 腰を落しました。


若頭 「・・・。 (くっ・・膝が・・)」


五助 「・・・。 (この試合で勝って人気者になる!」


高僧(行司) 「はっけよい!」


 両者の手はつきました!


 すぐに、二人はお互いの回しを掴み!



   四つ相撲に!



若頭 「うっ・・  (力が入らない!) 」


五助 「え? (あれ?若頭って意外とチカラ強くない!これなら勝てる!)」


 五助は!

 豪快に若頭を投げ飛ばしました!


若頭 「うわ!」

ガッツポーズする五助 「やった! 勝った! おとう!おかあ! 勝ったぞー!」


五助の父母 「五助!ようやった!(笑)」




高僧(行司) 「勝負あり!勝者・・・・・・だれじゃったかの~?」


 若頭の敗北に…

 観客は…




家老 「・・・ (やはり若頭の膝は相当、悪かったのか…残念だな…)」


おさご 「あなた…若頭が簡単に負けちゃいましたね?」


夫 「バカな…練習でワシに99連勝した若頭が、五助なんかに簡単に投げ飛ばされたぜよ」



 村中の女達、子供達も…


村の子供達(男女) 「五助なんかに負ける若頭って弱~い! 弱い大人って大きら~い!」



村娘 「な~んだ…若頭ってツマラナイ男だったのね…五助なんかに負けるなんて格好悪いよ! あんた!(怒)」



おなす 「なんだ?大将の筋肉隆々の体は見せかけかよ? 単なる「ウドの大木」だったのかい…がっかり興ざめじゃ!(怒)」



おいも 「五助に負けるって…なんだこりゃ?…今まで騙されてたよ! コラ!  若頭! さっさとイカダで紀州に帰んな!(怒)」



老婆 「あぶないあぶない。 危うく・・体を委ねるところだったよ・・」



 観客中から落胆の声が・・

 敗れた若頭の元へ「漁師A」と「紀州からの漁師達3名」が…



漁師A 「若頭! 大丈夫ですかい?」


若頭 「お前達すまない…負けてしまって…」


漁師A 「いえ。 アイツラ(室戸中の女)…好き勝手に言いやがって! アッシが…若頭の膝が怪我していて相撲を取れる状態じゃ無かったと言います!(大声)」


若頭 「言わなくていい…」


漁師A 「若頭なぜですかい?」


若頭 「言い訳するくらいなら、この負けて悔しい思いを糧にするんだ。負ける事はツライ事だとな」


漁師A 「ううっ・・若頭ぁぁあ・・(涙)」


 若頭の元へ、

 おさごと夫が…

 夫は土俵上で、まだ立っている五助を指差しながら、


夫 「若頭! なんで、アレに負けたんですか?」


若頭 「びしゃごの夫よ、すまないな負けてしまって…おぬしと次で戦いたかったが残念じゃ」


夫 「若頭…」


 その時、

 若頭の膝の怪我に おさごが気付きました。


おさご 「若頭! その足で! 相撲を取っていたんですか!?(大声)」


若頭 「おさごさん、怪我は関係無い、お前達(紀州漁師)行くぞ…」


紀州漁師達 「へい!カシラ! 足が大変でしょう?肩をお貸しします!(大声)」


若頭 「いや、いい…」


 若頭は膝が悪い素振りを見せること無く歩き…

 紀州からの漁師達は何処へ・・


 会話を一部始終、盗み聞きしていた

 室戸中の女達と子供達は…


村の子供達 「ふ~ん♪ やっぱりね♪」


村娘 「若頭様…あなた様は…お体もお顔も素晴らしいけど…あなた様のお心は…それ以上の男であります…ワタクシたちはどこまでもお供致します(涙)」


おなす 「あなた様(若頭)と五助じゃ…月とスッポン。 ワタシは最初から怪我でもしてるんじゃないかと思っておりました…(涙)」


おいも 「なんと男らしいお方。 ますます惚れもうしました。 あなた様にならばワタクシの心も委ねまする(涙)」


老婆 「大将が負けたんじゃ、つまらない、アタシャもう帰るよ…」


 大半の女は帰路へ…


五助 「そんな馬鹿な!」 




 次は、一回戦最後の取り組み!「おさごvs夫」


 二人は土俵へ!


 歓声の全ては「おさご」を応援!


観客全て 「おさごー! おさごー!」


観客全て 「ワシ、あの男(夫)キライや! 負けろー!」



 見合う夫婦…


おさご 「あなた! 日ごろのウップンを晴らします!」


夫 「へへへ♪ 軽くヒネッてやるぜよ♪ それにしても観客の声がやかましいぜよ!(怒)」


 その直後…

 夫は行事の高僧とアイコンタクトを始めました…





高僧 「・・・。  (夫よ・・ヤルのか?(イカサマ誤審)」



夫 「フッ・・ (モチロンぜよ・・(ニヤ))」



高僧 「・・・。 (妻が相手でもか?)」



夫 「・・・。 (そうぜよ、最近のおさごは反抗的じゃ・・ワシは仕事(漁)が忙しいのに・・おさごめ・・「水汲み(桶を持って片道2キロ)」も「マキ割り」も「屋根の修理」も「野良仕事(畑仕事)」も「芝刈り」も拒みだしたぜよ・・もちろん今のところは全部、おさごにやらしておるが・・。それやから・・おさごでも容赦無しや・・)」




高僧 「・・・。 (さようか・・約束の米の三分の一を忘れるなよ・・)」




夫 「・・・。 (約束?そんな約束したか?)」




高僧 「・・・。 (確かに約束した・・おぬしが忘れているだけじゃ・・(真っ赤なウソ)」




夫 「・・・。 (したかの~? したとしても・・三分の一? 今はもう若頭も六助のヨメもいないぜよ・・。 ワシがココで「おさご」を倒せば・・あとはもう弱い・・「五助」「おいも」だけじゃ・・。三分の一では割りが合わん・・)」




高僧 「・・・。 (なんじゃと?おぬし・・もしや約束を破る気か・・?)」



夫 「・・・。 (米・・30分の1じゃ・・これ以上は渡せん・・)」


  

   二人のアイコンタクトの空気が・・序々に険悪に・・




高僧 「・・・。 (30分の1じゃと? それだけでは数日で喰ってしまう! うぬぬ・・! 約束を破るとは! おぬしは地獄に落ちるぞ!)」




夫 「・・・。 (地獄が怖くて・・漁師は出来んわい! それにおまん! ワシよおさごの猪鍋を一人で全部、喰ったやろうが!)」




高僧 「・・・。 (まったく・・あくどい男じゃ・・10分の1でどうじゃ?」




夫 「・・・。 (あくどい坊さんぜよ!30分の1ぜよ! イヤなら・・一粒も分けんぜよ!」





   その時!!



   なんと!



   土俵の上には家老の姿が…




家老 「おぬし達(夫・高僧)…何を企んでおった? えらく長い間…見つめおうておったが?」



夫 「家老様!? いえ・・別に・・」



高僧 「・・。」



家老 「おさごの夫よ・・本当か?」



夫 「はい!」




  その時・・


  高僧が・・



高僧 「家老殿・・この者(夫)は・・ワシにイカサマを持ちかけて来たのじゃ・・」



夫 「おい!?(汗)」




家老 「高僧殿!それはまことか!?」



高僧 「もちろんじゃ・・相撲の土俵の上は神聖な場・・ワシは必死に拒み・・この男(夫)に仏の道を説いておったのです・・」



夫 「家老様!この坊主の言ってること全てデタラメです! 昨夜、この坊主からイカサマを持ちかけてきたんです!」



家老 「おさごの夫よ・・言い訳を言うな。 ワシは・・土佐藩山内家を幾度も救った高僧殿を信じる・・」



夫 「そんな~(涙)」




家老 「よって・・・おさごの夫! 失格! そして…永久追放!」




  夫は室戸相撲大会から永久追放になりました。




夫 「そんなアホな! 坊主!よくも嘘八丁を!(怒)」




高僧 「あたりまえのことをしただけじゃ・・・」  

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