5話


おさご 「あなた! お帰りなさい!」


高僧 「むぅぅぅぅ…!?」


 高僧はさっとムラムラダケをフトコロに隠しました。


 おさごは夫に急いで歩みより、

「あなた、無事でなによりです!」


夫 「おさご~♪ ちゃんと紀州に行ってクジラの漁法を持って来たで♪」


おさご 「えぇ~ほんの数日で~また冗談を~」


夫 「えへへ、本当やっちゃ」


おさご 「はぁ~?」


 高僧は立ち上がる。

高僧 「ワシはそろそろ失礼するぞ」


おさご 「どうもありがとうございました」


高僧  「うむ…」


 高僧は家を出て、

 たくさんのムラムラダケを六助の家に投げ入れました。



夫 「あの坊主は何をしに来たんじゃ?」


おさご 「お坊さんがキノコを差し入れに来てくれたんです」


夫  「そうか~? それじゃ~みんなを呼ぶで~」


おさご  「は? みんな?」


夫 「若頭ー! みんなー! 上がってください!」


 夫は大将たちを呼びましたが、返事がありませんでした。


夫 「ありゃりゃ~…みんなドコに行ったが~やろ~?」


おさご 「まぁ、あなた冗談ばっかり(怒) わたしはあなたが無事に帰って来てくれれば十分です。 稼ぎが良くなる方法は、また二人で考えましょう」


夫 「ほんまに漁法を持って来たのに~」


おさご 「村のみんなからたくさん差し入れをもらったき、これでゴチソウをつくりますね♪」


夫  「そんな~」


 おさごがゴチソウをつくろうとした時、

 漁師Aと紀州からの漁師達がきました。


夫 「おまんら~ドコに行っちょったんじゃ!(怒)」


 漁師Aは、夫を目をかっぴらいて見て、

漁師A  「アンタのとなりの家の夫婦は凄いな!? 家が揺れとったで!」


夫 「はぁ? ところで若頭は?」


紀州の漁師達  「そろそろ来ますわ」


おさご 「あなた、お客さんですか?」


 おさごが夫の隣に来た時、若頭が来ました。

 うつむきぼそぼそと…

若頭 「女の人があんなに凄まじいもんやったとは、知らんかった…」

 若頭は顔を上げ、おさごのカオを見ました。

若頭 「!!!」   


 

夫 「おさご! この人が紀州では大変お世話になった若頭ぜよ!」


 おさごは深々と頭を下げて、

おさご 「夫がご迷惑をおかけしました…」


若頭 「い、いや、全然、め、迷惑なんて、そんな…」


夫 「この人と、ココにおる他の人ら~で、室戸岬で鯨漁を始めるんじゃ!」


おさご 「あなたは何ができるんですか?」


夫 「ワシは勘定係じゃ!」


おさご 「あなたソロバンできました?」

夫  「できるっちゃ」

おさご 「知らんかったです」



夫  「というわけで、大将、ワシが勘定係でかまんですよね?」


大将  「あ、あぁ…別にいいと思うが」


 その時!



漁師A  「ちょっと待ったー!!」


夫  「なんじゃい?」


漁師A 「勘定係はワシがやろうと思っとったんや! だいいちコンナ田舎村の漁師のアンタがソロバンをホンマにできるんか? 頭も悪そうな顔しとるし…(微笑)」


夫 「なんやとー! そっちこそウドの大木やろ~が!」


漁師A 「げへへ…アンタ知らんのやな~ワシは子供ん頃は「神童」って村中の人達にいわれていたくらい頭が良かったんじゃ」


夫  「 !! な、なに!?」


漁師A 「げへへ…(微笑)」



おさご 「あした寺小屋に行って、どっちがソロバン上手にはじけるか比べたらどうですか? そうですよね若頭さん?」


若頭 「あ、ああ…そうすれば良いと思う」


 翌日、寺小屋で夫と漁師Aとのあいだでの、ソロバン対決が決まりました。


夫 「勘定係はワシや! 絶対負けんで!」


漁師A 「明日が楽しみやの~げへへ~(微笑)」



おさご 「みなさん! 夫も帰ってきたし、みんなの歓迎もあるき、今日はゴチソウをつくりますよ♪」


夫 「お~おさご、頼むわ!」


おさご 「せっかくやき、近所の人達も呼びましょう!」


 おさごはみんなの歓迎祝いの料理を作り始めました。  



 夕刻…おさごの家…


六助のヨメ 「おさごちゃん! マンボーの味噌炊き作って持てきたで!」


おさご 「ありがとうございます!」

六助のヨメは たくさん並ばれたゴチソウを見て、

「ほ~~♪ こりゃまった! たくさんのゴチソウやね!(興奮!)」


おさご 「はい!」


六助のヨメ 「サバの姿寿司、魚めし、猪鍋、カツオのタタキ、ナガレの塩焼き、

それに、ワタシの持って来たマンボーの味噌炊き! ごめんヨダレがでてきたわ♪」


その時、室戸の農家の若い衆が、

「おさごさ~ん、酒を持ってきました~!」


六助のヨメ 「酒もきたね、そろそろ浜に運ぼうか?」


おさご 「はい!」


 浜にゴチソウと酒が運ばれ、篝火も用意されました。

 すぐに、

 夫と若頭と紀州からの漁師達と、村中の人たちが歓迎会に来ました。


夫 「それじゃ~始めるぜよ! 若頭! まずは挨拶をお願いします!」


 若頭は緊張しながら、

若頭 「この度は、このような席を用意して頂いたことを感謝します。ワタシたちはこの室戸を日の本一のクジラの町になるように頑張ります」


室戸の人々 「わー!パチパチ!」


夫 「それじゃぁ、若頭! 酒と室戸のゴチソウを召し上がってください!」


若頭 「いただきます。これはなんの肉や?」


おさご 「それは、猪鍋です!」


若頭 「うまい! おさごさんは料理が上手だな」


おさご 「ありがとうございます!」



若頭 「この貝はすごくうまいな~。アワビか?」


おさご 「それは「ナガレコ」といいまして、この辺の海でとれるんです!」


若頭 「こんなうまい貝は食べたことがない…」




若頭 「この寿司(サバ姿寿司)も最高じゃ。 この魚めし(炊き込みご飯)のサカナはなんじゃ?」


おさご 「それは非常に珍しいサカナで金目鯛です!」


若頭 「この絶妙な醤油の量と塩加減に金目鯛の風味が…最高や」


おさご 「ありがとうございます!」




若頭 「このカツオを焼いたのはなんや? こんな料理の仕方は知らん」


おさご 「あ、それはワタシが考えた料理なんです…いつもはサバでやってるですが今日はカツオでしてみました」


若頭 「どれ・・ひとくち・・」


おさご 「あ? 塩をかけて食べてください」


若頭「パク、モグモグ…! ウマイ! サカナをこんなふうな料理しようと考えたとは…おさごさん! これはひょっとしてスゴイひらめきかも知れんぞ!」


おさご 「そんなことないです♪」




若頭「最後にコレやな? 強烈な臭いがする…」


六助のヨメ 「それはワタシが作ったんだよ!」


 若頭は首を90度に上げ、六助のヨメの顏を見て、

若頭 「ウマイ! コレは酒がすすむな。 コレはなんの肉ですか?」


六助のヨメ 「それはマンボーだよ! 作り方を教えちゃろか?」


若頭 「うっ…マンボー? マンボーなんて食えるのか…?」


六助のヨメ 「あたりまえやん! ココじゃゴチソウやっちゃ! 作り方はね~


一 「マンボーをぶった切り!内臓を取り出す!」

二 「内臓は肝と腸以外は畑の肥やしだよ!」

三 「身と腸を切る!おさごちゃんは包丁使いゆうけど、わたしゃぁ素手でやる!」

四 「鍋に酒を煮きらせ!取っておいた肝をこの手ですり潰し!鍋にほりこむ!」

五 「その後に味噌をぶち込むのさ! 身と腸を鍋にいれ、火が通るまで全力でかき混ぜるんだよ!」

六 「出来上がり!やっぱり…おいしく作るには愛情だよ♪」


 六助のヨメは、嬉しそうに旦那を見た後、

「若頭…? 分かってくれたかい…?」


「・・・分かりました」


  🌕✨   🛸 


🌲_👬👬🍶👬👬♬__🌊

    

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