3話



若頭 「どこから、この小舟で来たんじゃ? 理由が知りたいが?」


夫 「はい、じつは」


 夫は紀州に来たワケを話しました。


若頭  「女のために、ここで漁方を覚えて、金持ちになるために、室戸岬という所から小舟に乗って紀州に来たというんか?」


夫 「コレしか無かったぜよ」


 若頭は「はは」と呆れた笑いの後、


「命知らずなトコロが気にいった。役人には秘密にしとく」


夫 「ありがとうございます!!」


「今から陸に上がって、酒盛りをするが、おぬしもどうや? 土佐の漁師の話が聞きたい」


夫 「はい、よろこんで!」

  

 夫は若頭の乗る舟に移り、漁師達の浜に連れて行ってもらいました。




 🌸 夫は晴れて紀州上陸に成功しました 🌸


 


 その夜…




若頭 「今夜はトコトンやるぞ!」


漁師達 「おー!!」


 漁師達は浜で、

 飲めや歌えや踊れやの酒盛りを始めました!


夫 「うい~(酔っ払い) じゃんじゃん酒持って来~い! 土佐の男は酒じゃ負けんぜよ!」


 漁師Aが夫の肩を叩き、

漁師A 「おい、あんた、若大将が呼びよったで~。」


夫  「なに~若頭が~? すぐに行かんと!」






若頭 「飲んどるか?」


 夫はヘコヘコと…

夫 「どうも、このたびは助けていただき、そのうえこんな席に呼んでいただいて」


若頭 「ははは、気にするな…困ったときはお互い様じゃ…ワシの横に座っているのは、ワシの次男じゃ。兄にお前の事を話したら、兄も気に入ったみたいじゃ」


次男 「おまえの女のために紀州まで来たアホなとこが気に入ったわい・・。」


夫  「は~ありがとうございます~若頭さんは何人兄弟なんですか?」


若頭  「3人兄弟での~ワシが末じゃ。 ところで、あんたを紀州まで来らすほどの女なんやから、「おさご」っちゅう女はよほどの美人なんだろうな?」


夫 「そりゃもう、ワシのじまんの嫁ですわ!」

 

 その時!

 怒鳴り声が響きました!


「誰じゃそいつは! よそ者やないか! 役人につきだせい!!」


 網元の長男が現れた!

 すぐに横にいた男の肩をバン!と叩き、

「これ(漁師A)に聞いたが、ソイツは土佐から来たモノらしいやないか?」


 漁師Aは苦笑いを、若頭に、

漁師A 「若大将・・すいません・・」


 次男は、長男の前に行き、

「ま~兄貴、ここはワシの顔にめんじて許してやってくれんか…」


「だいたい…ワシらがクジラを捌いている時に、お前等はのん気に酒盛りか!?  すぐにやめろ!?」


漁師達 「・・・(汗)」


 漁師達は酒を飲むのを止め、片付けはじめました


長男 「片付けが終わったら、すぐにワシらの手伝いに来い! 分かっとるか!」


漁師達  「へい…」


 足取り重く、漁師達は仕事に行った。


 酒盛りの場には、

 夫と次男と若頭だけが残りました。


夫 「なんか、自分のせいでこうなったみたいで、すいません…」


若頭 「気にするな、たぶん兄は役人に報告はせんやろう」


夫  「そうですか、助かった~」


若頭  「長男もな、悪いヤツやないけど、最近、この紀州もクジラの取れる量がめっぽう減って、跡継ぎである長男もいろいろと大変なんや」


夫  「そうなんですか」


若頭 「さて、みんなも消えたし、ワシらは帰るか」


夫  「あの~若頭~わしが泊まるところ、どっかないですか?」


若頭 「ワシの家の納屋がある、屋根があるだけマシやろう?」


夫  「ありがとうございます!」


 夫は若頭の家に行きました。






  zzぐ~すかぴ~ すぴすぴぴ~~zz



おさご 「やめてください! わたしになにをするんですか!(怒)」


斧を持った荒くれ者たち 「ぐへへ、こんなベッピンがこんなトコロにおるとはの~おとなしくせんかい!」


おさご 「いや~(涙)」


 その時!


 夫はユメから目覚めました!



夫  「おさご!! ユメかい? イヤなユメやったな~寝よう…」



  zzぐ~すかぴ~ すぴすぴぴ~~zz



高僧 「おさごよ…残念な事じゃが…やはり、お前の夫は死んだようじゃ…」


おさご 「そうですか。」


高僧 「うむ、これからはワシがおまえを幸せにしてやるぞ…」


おさご 「はい! ふつつか者ですが! よろしくお願いします!」


高僧  「おさご…」


おさご 「お坊さま…ぁ」



 その時!

 夫はユメから目覚めました!




夫  「おさご!! …また夢か~おさごが心配じゃの~…… !! 秘策が思いついたぜよ!!」


 翌朝…

 若頭の家の戸を叩き、若頭が出てきた。

夫 「あの~若頭~はなしたい事があるんですが…」


若頭 「なんや?」


夫 「ウチのヨメが心配なんで、帰ろうと思うんですが」


若頭 「…そうか、仕方がないな」


夫 「それで、ものは相談ですが」


若頭 「なんや?」


 夫は昨夜に思いついた秘策を若頭に話しました。


若頭 「…ワシに紀州を捨て、土佐の室戸岬に来てクジラ漁を?」


夫 「どうですか?」


若頭 「…」


夫 「やっぱり無理ですか…」


 夫はガックシと肩を落とすと…


若頭 「ここにいても、兄が跡を継ぎ、自分のやりたいようにはできん…土佐で一旗上げるのも良いかもしれんな」


夫  「それじゃぁ・・・?」


若頭  「あぁ、行こう、土佐へ…室戸岬へ…」


 夫は飛び上がりながら、

夫 「やったぜよ!」

 地に着いた時、思い出した様に、

夫「あの~帰るには熊野ってトコでオフダをもらわんといかんのやけど、熊野ってドコにあるんですか?」


若頭 「心配するな、熊野はすぐ近くや」


 若頭は、漁師Aの家に寄り、室戸岬を伝えた。




 夫と若頭は熊野の那智大社に到着。


   🌞☁   🐤~


 👼⛰⛰👩⛩_👯~__


夫 「しっかし、たくさんの人がいますね~~」


若頭 「あぁ、これが目的なら手形なしに関所を通れるしな、旅気分で参拝するもんが最近は増えてるんや」


夫 「そうなんですか。」


若頭 「あそこでオフダを貰えるから、並ぶぞ」


 二人は社務所に並びました。そして10分ほどして…



しんどそうな巫女  「はあぁぁあ~次のかた~」


若頭 「オフダを二枚お願いします」


巫女 「!!! はっっはい…二枚ですね(とっても好みの殿方だわ…)」


一目惚れした巫女 「あの~お名前は? おところは?」


若頭 「いや、名のるほどのもんやないです…土佐の室戸岬から来ました」


巫女 「そうですか…はい、どうぞ!」


若頭  「おおきに…やない、ありがとう」


 巫女は椅子の足元にあった箱を出して、

巫女 「おみくじもどうですか!?(ドキドキ) 那智大社のおみくじはすごく良く当るって評判なんですよ!」


 少し考えて、

若頭 「やってみるか」


 若頭はおみくじを引きました。


喜ぶ巫女 「おめでとうございます! 大吉です! 大吉はほとんど出ないのにスゴイですね!」


若頭 「いやぁ偶然ですよ」




  その時・・





夫 「おい・・・わしにも引かせてくれんかい」


巫女 「・・・・」

 巫女は箱を下ろし、

「こっちの箱から引いて」


 夫はおみくじを引きました。


夫 「なんじゃ、こりゃ!」


巫女 「あら~ほとんど出ないのにスゴイですね~気をつけてください」


夫  「…」


若頭  「ま~あんまり気にするな、そろそろ行こうか…」


巫女  「ぜひまた! 『熊野那智大社』にいらして下さい!」



二人はオフダを貰い、那智大社を後にしました。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る