第10話 森の世界
この世界では長年、人間による自然破壊が続いていた。人間の文明が急に発展し、人間の人口も増加、土地を求めて自然を破壊していたのだ。
森の民であるエルフの反対を押し切り力強くで自然を破壊する。当然、エルフは人間に対抗した。
だが、対抗したエルフは人間の発展した文明により創り出された武器で黙らされる。
ずっとこの世界を覆っていた綺麗な緑色はかなりの部分が緑を失い違う色へ染められた。
だが、私の守るこの森だけは絶対に守り抜くと誓ったエルフがいた。
仲間のために、この森に平和をもたらす。そのためにエルフは剣を握った。
妖精王は剣を取り人間と戦う。
「ここは………」
辺り一面に広がる広大な緑、木々が生い茂り新鮮な空気が体に流れ込んでくる。
「あなたは誰、人間?またこの森に手を出そうというの?」
僕が振り返るとウェーブのかかった長い薄い茶髪の少女が剣を握り立っていた。人間、ではない。彼女の長い耳を見て僕はそう思った。そう、彼女の容姿は人間ではなく、僕が知るエルフと呼ばれる種族だ。当然見たことはない。だが、僕が知るエルフと完全に特徴は一致していた。
「答えなさい、またこの森に害をなすつもりなの?」
「え…どういう……」
「とぼけるな、また、数年前のような悲劇をこの森にもたらすつもりなのだろう!そんなことはこの私、森の妖精王アリアが許さない」
彼女はそう言いながら剣を強く握り僕目掛けて襲いかかる。
「え…ちょっ……」
完全にこちらの話を聞く気はないらしい。僕は彼女の剣を躱して一旦その場から離れようとする。
「逃がさない!」
彼女は凄まじい速度で追いかけてくる。そしてあっという間に僕に追いついた。
「ちょっと…話を聞いて、僕は別にこの森に何かしようとは思ってないから…」
「………嘘は言ってないみたいね」
そう言いながら彼女は剣を収めた。どうやらわかってくれたらしい。
「嘘は言ってないみたいだけどならどうしてあなたはこんな場所にいるの?」
「あ、えっと…僕、別の世界から来て気がついたらここにいて…」
「渡り人ってやつね…なるほど、一応理解はしたわ。嘘は言ってないみたいだし。ごめんなさいね。私の早とちりで襲いかかっちゃって…」
そう言いながら彼女は頭を下げた。僕が気にしてないから頭を上げてというと頭を上げて僕の方を見る。
「あなた…えっと、名前教えてもらっていい?」
「あ、うん。僕はしょう。アクロスロマネスカ支部の渡り人」
「私はアリア、種族はエルフ、この森の長で森の守護者、そしてこの森の妖精王よ」
やっぱりエルフだったようだ。僕のいた世界のアニメや漫画などで知識はあったが、実物はアニメや漫画などとは比べ物にならないくらい可愛い。
僕がアリアに見惚れているとアリアは首を傾げた。アリアの反応を見て僕は我を取り戻し先程から気になっていたことを尋ねる。
「その、妖精王って何?」
「私はこの森にいる万を超える妖精全てと契約しているの。妖精王はエルフの中でも数少ない選ばれたエルフが持つスキルみたいなものね。普通、精霊や妖精、大精霊などは一人につき一体までしか召喚出来ないでしょう?私は妖精なら100体まで召喚しておくことができるの」
一般的な精霊使いは複数の精霊たちと契約して状況に応じて召喚する精霊を変える。基本的な精霊の役割は契約者のサポートや弱点のカバー、単純な戦力、として召喚される。精霊を召喚している間、契約者は自分の魔法と精霊の魔法、実質二つの属性の魔法を使って戦闘をすることになる。だが、アリアは100体の妖精の力、つまり最大で101種類の属性の魔法を同時に扱えると言っても過言ではない。すっごいチートスキルのような気がする。
以前、シャルから渡り人や異世界人にはスキルを持つ者がいると聞いた。スキルは魔法と異なり産まれながらにして持つボーナスのようなものらしい。産まれてすぐにスキルを持っている人もいれば何かのきっかけでスキルを持つ人もいるみたいだ。ちなみにシャルもスキルを持っていると聞いた。どんなスキルか聞いたのだがシャルの本当の意味での切り札というので絶対に教えてはくれなかった。魔法属性は一人につき一つだが、スキルは一人一つみたいな制限はないらしい。まあ、スキルは覚えようとして覚えられるものじゃないのでスキルという概念があることだけは覚えておくようにシャルに言われていた。
「なんか、すごいスキルだね……」
「まあね。このスキルのおかげでこの森を守ることができてるからこのスキルには本当に感謝だよ。あ、ところであなたはこれからどうするの?この世界に来たばかりみたいだし行く場所とかないでしょう?私の家に来る?渡り人の話とか聞いてみたいし」
「え、でも……」
エルフとはいえ女の子の家に突然泊まるのはどうかと僕が返事に困っているとアリアが大丈夫、あなたが私に変なことしようとした場合は迷わずぶちのめすからと満面の笑みで言われた。
結局、僕はアリアの厚意に甘えることにしてアリアと一緒にアリアの家に向かうのだった。
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