第9話 物語の分岐点
圧倒的な破壊の力が私とルシフに迫る。デスタが展開する闇を光で妨げながら距離を置いて鎖で攻撃をするが鎖はあっさりと破壊されてしまう。
「ルシフ、あれをやるわよ」
「わかった」
「光陰の鎖」
出し惜しみをしている場合ではないと考えた私は1日に1本しか作ることができない鎖を作り出す。追尾する
その鎖にルシフは最大限まで光を混ぜ込む。先程まで使っていた光の鎖は光の濃度が50%くらいだろう。それでも普通の人には見えないくらいには速い。だが、この鎖は80%光を混ぜ込んだ。当然こちらの方が本来の光に近いため速くて光の性質を多く持つ。
そしてこの鎖は生命の鎖の効果により破壊されてもすぐに元どおりになる。さらに、膨張する鎖で鎖の長さを増したり分岐させたりもできるし爆発する鎖で光の力を爆発させることも可能、そして強壁の鎖のおかげで何よりも強い。まさに私の最強の切り札とも言える。
この鎖の欠点は魔力の消費が異常なくらいに大きいことだ。私もルシフもかなりの魔力を持っていかれる。そのために1日1回が限界だ。そして少しの間、まともな魔法が使えなくなってしまう。
そんな諸刃の剣を私は破壊者デスタに向けて放つ。鎖の軌道は|追尾する鎖(ハウンドチェーン)が決めるので私は考えない。私が考えるのはいつ、どのタイミングで鎖に仕掛けてある魔法を発動させるかだ。
破壊者デスタは闇で光陰の鎖を吸い込むために光陰の鎖を囲むように展開する。そして闇を光陰の鎖に近づけるがそれらは全て爆発する鎖によって放たれた光で消滅するのだった。
「チッ…」
破壊者デスタは舌打ちをしながら周囲にいくつもの闇の塊を産み出す。光陰の鎖を防ぐための盾にするつもりだろう。だが、無駄だ。膨張する鎖で真っ直ぐ破壊者デスタに向かっていた光陰の鎖から分岐するように光陰の鎖が現れて闇の塊を一つずつ消滅させる。闇の塊という盾を失った破壊者デスタのもとに光陰の鎖が到達し破壊者デスタを拘束した。更に、膨張する鎖を伸ばして破壊者デスタとの戦いで傷を負っていた彼女も拘束しておく。
「破壊者デスタ、とりあえずいくつか質問に答えなさい。あなたがこの世界に来た目的は何?」
光陰の鎖で拘束されている破壊者デスタに私は尋ねる。聞いても無駄かもしれない。その時は私がまともな魔法を使えるようになったら操作する鎖で破壊者デスタを洗脳して吐かせればいいと考えていた。ちなみに現在は真偽の鎖を使っている。私が使える鎖魔法ではかなり低位の魔法で相手が言っていることが嘘か本当かを見抜く魔法だ。
「……決まってんだろ。この世界は存在するに値する世界かを調べに来た。不必要な世界なら破壊もしたかもな。あ、ちなみにこの世界は合格だ。まあまあ面白い世界だ。破壊はしないでおこうと思ってる」
嘘は言っていない。本当に、世界を破壊出来る力を持っていると知り私は少し震えた。
「最近、メルカティアという世界が消滅しましたがそれはあなたの仕業ですか?」
「メルカティア?知らねえな……あ、あいつが破壊したって言ってた世界か、世界の終わり、世界の記憶クロムウェルが破壊したって言ってたぜ」
嘘は言っていない。やはりメルカティアの消滅には世界の終わりが関わっていたのだ。
「あなたは今までいくつの世界を破壊しましたか?」
「さあな、数えてねえよ。気に入らない世界は全部壊してきたからな…」
嘘は言っていない。何の悪意もなく自分が全て正しいと言うかのように破壊者デスタはそう答えたのだった。
「あなたたち世界の終わりの拠点となる場所を教えなさい」
「拠点?そんなもんねえよ。ただ自由気ままに世界を渡り、壊し、気が向いた時に集まって終わらせた世界の話をするくらいだ」
「クズめ…破壊した世界に住む人の気持ちを考えたことないのか?」
「ないね。破壊すると決めた価値のない世界にいる人間なんて価値のない人間だ。そんな価値のないやつらのことを考えるわけないだろう」
「もういい…この場で罪を償え」
「嫌だね」
私は光陰の鎖に力を込めて破壊者デスタを殺そうとする。だが、次の瞬間、光陰の鎖はあっさりと破壊された。
「大精霊の使い手ごときの魔法で封じられると思ったか?最強クラスの力を持つ精霊神の力をよ…答えは簡単、無理に決まってるだろ。まあ、少しは楽しめた。だから楽に破壊してやるよ。さあ、破壊の精霊神の力の前にひれ伏せ」
破壊者デスタは私に手を伸ばしながら言う。私は破壊者デスタから離れようとするが体が全く動かない。
私は死を覚悟した………
「紅焔蓮光斬」
私のもとへ破壊者デスタの腕が到達する直前、その場に現れた長い赤髪の女性が破壊者デスタの腕を真っ赤に燃える剣で斬り飛ばした。
「すごい魔力を感じて来てみたら…か弱い女の子を虐めるなんて許せないわ」
「へえ、なんだっけ…ああ、思い出した。この世界最強の剣士様だ。これはまだ楽しめそうだ…」
突如現れた長い赤髪の女性と破壊者デスタが対峙するのだった。
異常なほどの魔力を感じたシャルティアさんが様子を見に行くと言いながら部屋を飛び出してしばらく時間が経過する。未だにシャルがここに到着しないのも不自然だと思う。僕はシャルにスマホからメッセージを送るが反応がない。
「ねえ、お兄ちゃん、これ何?」
僕が大切にポケットにしまっていた時計が落ちてしまったのだろう。僕はゆきちゃんから夢海から貰った時計を受け取る。
「………光ってる?……いるのか……この世界に……夢海が……」
「夢海?お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと知ってるの?」
「え、どういう……」
「話はそこで終わりにしてもらおうか…まだ、話が交わるのは早い」
夢海のことを知っているような感じのゆきちゃんに僕が尋ねようとすると部屋の入り口に黒フードの男が現れた。その男を見てゆきちゃんは異常な程震えた。僕はゆきちゃんを庇うようにゆきちゃんの前に立つ。
「誰だ……」
「はじめまして、かな、私は世界の終わり、世界の記憶クロムウェル、君たちの世界、メルカティアと雪の世界を破壊した者と言えばいいのかな?いやいや、誤算だったよ。まさか雪の世界でたまたま生かしてあげた女の子と君がこの世界で遭遇するなんて…それに、君にとって大切な人も来ているみたいだしね。まだ、物語が交わるのは早い。というわけだから君にはまた別の世界に飛んでもらうことにするよ。この世界、革命戦線とは別の世界に、ね」
黒フードの男がパチンと指を鳴らすと僕の足元に黒い穴が開いた。僕はまた、別の世界に飛ばされた。
「お兄ちゃん……」
目の前からお兄ちゃんが居なくなり私は動けなくなった。逃げ出したいが足が動かない。ポーラが私を守るように私の前に立つ。
「ああ、大丈夫だよ。君たちを破壊する気はないから…今はまだ、ね。じゃあ、帰るとしよう。この世界を破壊する気はないからな…」
黒フードの男はそういうと私の前から姿を消した。私はホッとしながらもその場に倒れそうになる。そんな私をポーラは黙って支えてくれたのだった。
私を助けてくれた長い赤髪の女性が破壊者デスタと対峙する。破壊者デスタは闇を展開し、長い赤髪の女性を闇に取り込もうとする。
「煌覇滅神剣」
光り輝く薄い黄色と薄い緑色が混ざったような炎を剣に宿し闇を斬り裂いて行く。
「流石、この世界最強の剣士様だ。闇をも斬り裂くとは見事だ。敬意を表し、名乗らせてもらおう。私は世界の終わり、世界の破壊者デスタ。以後お見知り置きを…」
「私は解放軍、紅焔の剣士、シャルティア、悪を裁く剣だ」
「ちっ…悪いがこの世界での役割は終わった。この世界から消えるとしよう」
そういうと破壊者デスタはその場から、嫌、この世界から姿を消した。
「さて、大丈夫かな?シャルロット殿」
「何故私の名を?」
「貴殿の仲間、しょうから聞いた特徴と一致していたからな。私はシャルティア、解放軍最高司令だ。よろしく頼む。とりあえずしょうのところへ案内しよう。ところで、そちらの彼女は?」
長い赤髪の女性、シャルティアさんは私とルシフの鎖で縛られている女の子に目を向けて尋ねる。
「私と同じ渡り人です。何者かに操られていたようなので私の魔法で拘束しました」
「なるほど、そういうことですか……」
「その彼女のことで話がある。聞いていただけるだろうか」
私がシャルティアさんに事情を説明しているといつのまにか私が拘束した女の子の横に青髪の女の子がいた。
「私はこの娘、ソアラの仲間、ノアと申す。私とソアラ、そしてもう一人の仲間とこの世界に来たのだが壁の中に現れてしまってな、襲われて戦ったのだが、ソアラは持ち出されたマジックアイテムにより精神を支配された。そしてもう一人の仲間はソアラの精神支配が解除された場合の人質として捕らえられている。この世界の現状は大体把握している。私としては渡り人として解放軍に力を貸したい。だが、今は仲間を助けなければならない。私の力は好きなように使ってくれて構わない。だから、仲間を助ける手伝いをして欲しい」
そう言いながら青髪の女の子ノアさんが頭を下げた。それを見てシャルティアさんは剣をしまう。そしてノアさんの手を取った。
目が醒めると僕は森の中にいた。
辺り一面緑色の世界。
そこに僕はいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます