第8話 光の大精霊と破壊者
「術式起動」
私は鎖魔法を使い自由に操れる鎖を大量に産み出す。そして私を取り囲むやつら目掛けて鎖を放った。
「鎖渦」
大量の鎖を渦のようにぐるぐると私を中心としたドーム状に回転させる。鎖の速さは徐々に加速し、当然のように鎖が回る勢いでなる音が鋭くなる。鎖のドームを徐々に広げていき私を取り囲むやつらを一掃した。
「なんだ、弱かったわね…で、なんで私を襲って来たか教えてくれない?」
私がまだ意識のあるやつに尋ねるが返事はない。仕方ないから一人鎖で拘束してしょうのところに連れて行こうかと思っていると私の背後からゾッとするような気配を持つ強者が現れた。
「あんたがこいつらのボスってことでいいのよね?その気配、あなたも渡り人みたいだけど私とやる理由はあるの?」
振り返ると2本の大剣を構えた小柄な黄色の髪の少女が立っていた。剣を納める気はないらしい。ならば、戦うのみ…
「アクロスロマネスカ支部序列三位シャルロット・フランシェスカ」
普通、アクロスに所属する渡り人が戦う際にはこうして所属と序列を述べるのが礼儀だ。だが、返事はないところを見ると彼女はアクロスに所属する渡り人ではないのだろうか…などと考えていると大剣を勢いよく地面に打ち付けた。私はすぐに警戒を強める。だが、一瞬で彼女は私の目の前に現れた。何が起こったかはわからない。でも、何かが起こった。一瞬で私の警戒を掻い潜り私の前へと現れた彼女は小柄な体型に似合わない大剣を私目掛けて勢いよく振るう。私は慌てて展開していた鎖を操り彼女の大剣にぶつけて大剣の軌道を逸らす。そしてその場から離れて距離を取った。
「ルシフ、やるわよ」
私は私が契約している大精霊を召喚した。私が持つ最強の切り札であるルシフを使うべき相手が目の前にいると判断したためだ。私の呼びかけに応じてルシフは現れた。手のひらに乗るほど小さな大精霊だが、存在感はかなりのものだ。光り輝く翼を羽ばたかせパタパタと飛びながら私の顔の横にやって来た。
「やあ、シャル、私を呼び出すなんて相当厄介なやつが相手みたいだね」
「ええ、あの子が相手よ。あの子、仕掛けはわからないけどはやい…一瞬で私の前に来た」
「なるほどね。じゃあ、こっちもはやさで対抗しよう」
ルシフはそう言いながら私が産み出した鎖に魔力を流し込む。
「とりあえず仕込みはしといた。私が適当に援護するから隙を見てシャルの鎖で無力化させよう」
「わかったわ」
私の返事を聞きルシフは自身の周りに無数の光の棘を作り出した。
ルシフが一瞬、私の方を向き視線で合図をするとルシフが作り出した光の棘が一瞬で彼女目掛けて飛んでいく。飛んできた光の棘を彼女は巨大な大剣を振り回して撃ち落としていく。
「術式起動、束縛の鎖+追尾する
私が扱える鎖魔法の中でも上位の魔法縛った相手の力を奪い魔法を一切に使えなくさせるという効果を持つ束縛の鎖に追尾効果を持つ追尾する
私が放った光輝く鎖は一瞬で彼女のもとまで到達する。鎖が彼女のもとに到達した時、遅れて光の道筋が鎖が通った軌道を教えてくれた。
光り輝く道しるべが放物線を描いて彼女のもとに到達した瞬間には決着はついているはずだった。しかし彼女は巨大な大剣を1本放り投げて両手で1本の大剣を握った。そして私の放った鎖をあっさりと粉砕するのだった。
「強い…シャル、相手を傷つけずに勝つのはキツそうだよ」
「そうみたいね。仕方ない。本気でやるわよ」
私はルシフにそう答えながら新たに鎖を大量に産み出した。それらの鎖全てにルシフの光の力を混ぜ込み自在に操る。頭をフル回転させて脳内で光の道筋を描き鎖を操る。私がイメージした瞬間には鎖は彼女のもとへ到達している。そんな光の速度の攻撃も全て防がれてしまうのだった。彼女は巨大な大剣を凄まじい速度で振るい一本ずつ鎖を粉砕していく。光の速度の攻撃についてこられる彼女の強さは異常なものだ。だが、その異常な強さでも自分とルシフのコンビには勝てない。そういう自信があった。
「ルシフ、援護お願い」
「わかってる」
私が新たに産み出した鎖に光の力を混ぜ込みながらルシフは別の魔法を使う。だが、それらの魔法も全て防がれてしまうのだった。
「シャル、私がメインでやるからシャルは鎖で相手の動きを牽制して」
「わかった」
私とルシフは攻撃の主軸をルシフに変える。私はルシフの攻撃が当たりやすいように、相手を操るように相手の動きを制限する。普段ならこの戦法で圧勝できる。だが、圧倒的な強さの前に脆い鎖はあっさりと破壊され相手をいつものように動かすことができない。
私とルシフ、そして彼女の戦いは一見私とルシフが押しているように見える。だが、実際には違う。私とルシフは結構な量の魔力をすでに消費している。だが、彼女はまったく本気で戦っている感じがしない。まるで操られているかのように表情が変化しないのもおかしい。
「なんか楽しそうなことやってるな。俺も混ぜろ」
私とルシフ、彼女が戦っている場に新たな影が現れた。圧倒的な強者の風格を漂わせた黒服の男が乱入して来た。
私とルシフ、彼女を破壊するために………
突如現れた乱入者は闇を周囲に展開した。闇魔法の使い手、ということだろう。
「シャル、あいつの相手は私がやる。シャルは彼女の相手を…」
「わかってる」
ルシフは私が新たに産み出した鎖に光の力を混ぜ込んだ後すぐに乱入者目掛けて光の魔法を叩き込む。光と闇、相反する力は反発し消滅した。闇は動きが遅い。そのためルシフは光の速さの棘を大量に産み出し光の速さで撃ち込む。だが、闇は光の棘を吸い込み消滅する。
その間、私は彼女の相手をする。ルシフが光の力を混ぜ込んだ鎖に加え普通の鎖を産み出す。そして光の速さと普通の鎖の速さ、2段階の速さで彼女を惑わせようとするが圧倒的な破壊力の前にその手は通じなかった。
「しまった…」
鎖の生成が間に合わず彼女をフリーにしてしまった。彼女は一直線に私の方に突進してくる。
「シャル!」
ルシフは慌てて私の前に光の防御魔法を展開する。だが、彼女はあっさりと防御を突き破り私に向けて大剣を振るった。ルシフの魔法のおかげで致命傷は避けれたがかなり大きな一撃が私に決まった。
私はその場に倒れこんだ。私が倒れたのを見た彼女はルシフの方へと向かって行く。
「シャル…」
ルシフは光の魔法を放ち彼女と乱入者から距離を取る。そして私の方へやって来て私に光の回復魔法をかけてくれる。
彼女は一直線に乱入者の元へ向かう。そして巨大な大剣を乱入者目掛けて振るうが乱入者は闇を硬質化し大剣を闇の壁で受け止めた。
彼女は大剣をひたすら振り回して次々と闇の壁に連撃を叩き込み闇の壁を粉砕した。
「まじか、これを壊すなんて…なかなかやるな。これでちゃんと脳を使って戦えていたらもっと強いんだろうな。なんて命令されているかはしらんが勿体ない……」
乱入者はそう言いながら闇の力を操り彼女を取り囲むように闇を展開し闇を彼女の体に押し付けて彼女を拘束した。だが、次の瞬間、闇はあっさりと粉砕された。彼女は電気を身に纏い電気を高密度で圧縮させた砲弾を闇にぶつけていたのだった。そして手に持つ大剣に電気を纏わせて一撃の重さを増させる。
「どうやら彼女は電気を操る魔法使いのようだね。電気を身に纏って速さや一撃の重さを強化、電気を高密度に圧縮させて放出したりもできるみたいだね」
「そうね。なかなか厄介ね…」
「どうする?撤退する?」
傷がだいぶ癒えた私に向かってルシフが尋ねる。ぶっちゃけこの状況、撤退は悪くない手だとは思う。だが、この二人をこのままにしておくのは危険のような気がする。
「ルシフ、あっちの電気の子、たぶん誰かに操られているわよね?」
「ああ、たぶん操作系の魔法かマジックアイテムだろうね」
「なら拘束して動きを封じた方がいいわよね。同じ渡り人として彼女をほっておけないし…それに、あいつはやばい…なんか嫌な予感がする……」
「そうだね。ぶっちゃけあいつはかなりやばい」
「じゃあ、戦うわよ。まずは彼女を援護して彼女にあいつを倒してもらいましょう。そしてそのあとに彼女を拘束する」
「わかった」
方針が決まった私とルシフは動き出し彼女の援護を始める。私は鎖で動きを制限しルシフは光の魔法で闇を打ち消す。こうして私とルシフの援護が入ることで彼女が完全に優勢になった。そして彼女の大きな一撃が決まり乱入者は吹き飛ばされた。乱入者は巨大な岩に直撃した。死んでいてもおかしくはない。だが、彼女は乱入者は死んではいないと言うかのように電気を高密度に圧縮させた巨大な電気の球体を乱入者が吹っ飛んだ岩目掛けて放った。
電気の球体は瞬く間に岩まで到達する。だが、岩が破壊される直線に電気の球体は消滅した。
「やれやれ、厄介なことをしてくれるな。まさか操られているやつと連携して戦ってくるなんて思わなかったぞ。まあいい、これからは本気でやるとしよう。世界の終わりの一人、世界の破壊者デスタとして相手をしてやる」
デスタ、その名を聞いて私の体は震えた。世界の終わり、その名の通り様々な世界を破壊している組織だ。その組織にいる六人の幹部、その一人である破壊者デスタが目の前にいるとわかったのだから当然だろう。アクロスからは世界の終わりのメンバーと遭遇したら即時撤退を命令されている。理由はいくつかある。単純に世界の終わりの幹部が強すぎるというのも理由の一つだ。
以前、アクロスの支部がある世界に世界の終わりの幹部が現れたことがある。その際、その世界のアクロスに所属する渡り人全員で討伐に向かったがあっさりと返り討ちにあったことがある。その支部の規模がかなり小さかったというのも敗因の一つだが、その戦いにおいて世界の終わりの幹部が精霊神の力を使ったことがわかった。神の領域の力に戦いを挑むのは無謀だとアクロスの本部は考えたらしい。
現在、アクロスには4人の精霊神使いがいる。その4人が世界の終わり討伐作戦を進めているらしいが世界の終わりの拠点がわからないため作戦は始まってすらいないのが現状だ。
今、私の目の前にいる破壊者デスタは間違いなく精霊神の力を使っている。そんな敵から逃げ出せる気はしなかった。私は戦うことを決意した。戦って勝つ以外に生き残る選択肢はないと悟ったからだ。
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