第6話 幕間-崩壊する世界より
お姉ちゃんがお姉ちゃんの世界に戻ってからしばらくの間、この世界のあちこちで花見が行われて春の訪れをみんなで祝いました。
「ポーラ、桜の花、見にいくよ」
ずっと見たかった桜の花、それが外にある。そう思うと私は居ても立っても居られない。この前は夜に夜桜を見に行ってお母さんに怒られたりもした。私はポーラを強引に連れ出して家の外に出る。
家の外には満開に咲いた桜の花が辺り一面覆い尽くしていた。つい最近まで過酷な寒さだった外が今では心地よいそよ風に変わっている。
「何回見ても綺麗だね…」
私がそう呟くとポーラは同意するように頷いた。私は私の前を舞っていた桜の花弁を一枚取って見つめる。綺麗な桜色、私はこの色が大好きだった。
桜の花を見るのを楽しんだ後、私は地面に落ちている桜の花弁を集める。地面からはすでに雪が消えていて茶色の地面が広がっていた。そして、その茶色の地面を桜色の花弁が覆い隠していたのだった。
私はいつもみたいに綺麗な桜の花弁を集める。手のひらの上にいっぱい桜の花弁を集めていた。するとその時、ここら辺で一番大きな桜の木の下が輝いた。
「この世界は雪で覆われた真っ白な世界でした。永遠に続く冬の寒さや異常なほど降り続ける雪は人々を苦しめました。そんな世界で生きる人々は桜の花を見ることが夢でした。他の世界から来た人から聞いた桜の花、それは春の象徴だったからです。桜の花が咲いて真っ白な世界が桜色の世界に変わることを願ってました。そんな真っ白な世界で生きていた一人の少女がいました。その少女がお母さんに頼まれて精霊と共に外に薪を取りに行くと雪の中で倒れている女の子と妖精を見つけました。少女は女の子と妖精を雪の中から助け出し家に連れて帰りました。少女が助け出した女の子は魔法使いでした。みんなの夢の力を集めて実現させる。それが女の子の使える魔法でした。少女の夢を聞いた女の子は少女を外に連れ出しました。桜の花を見せてあげる。と言い女の子は少女に人を集めるように言います。少女は女の子の言うことに従い人を集めました。少女が集めた人たちと共に女の子がいる場所に戻ると女の子は連れていた妖精と共に巨大な魔法陣を描いていました。そして、女の子は魔法を発動させます。少女が集めた人たちから桜の花を見てみたい。春を感じたい。という夢を読み取りそれを実現させたのです。女の子の魔法が完成し、真っ白な世界は徐々に桜色の世界に変わりました。世界が桜色に染まるのを見ながら少女は女の子と妖精にお礼を言おうとします。ですが、少女が女の子と妖精がいた方を振り向くと女の子と妖精は既に元いた世界へと戻っていました。少女はこの話を周りの人たちに伝えました。周りの人たちは春の訪れを感じさせてくれた女の子に感謝をしながら春の訪れを楽しむのでした。」
この世界、私の世界で、私の目の前で起こっていた私とお姉ちゃんの物語を淡々と童話のように読み上げながら光の中から男の人が出てきた。真っ黒な服に身を包みフードで顔はよく見えなかった。だが、その鋭い眼差しを見て私は体を動かすことができなくなった。
「なるほど。つまらない物語だ。この世界もつまらない。こんなつまらない世界はいらない。君もそう思わないかい?」
男の人が私に語りかけてくるが私は何も言えなかった。
「おいおい、無視は酷いな〜まあ、いいや、消えて…世界ごと…ね……」
桜色に染まった世界は一瞬で桜色を失った。そして暗黒に呑み込まれて完全に消滅したのだった。
「ふう、やっぱり世界の破壊は気持ちいい、前回破壊した世界も星と星をぶつけさせるかなり綺麗な終わりだったが今回もいい終わりだった。せっかく桜色になった世界から桜色を奪う終わらせ方はなんとも言えないな…それにしてもまた、あの渡り人が担当していた世界を破壊してしまったな…二度連続になってしまい申し訳ないな…」
悪意を込めてフードの男は一人、崩壊する世界の様子を別世界から見物していた。雪の世界、桜色の世界は完全に消滅したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます