第7話 目付 夏目清十郎①
目付 夏目清十郎①
神田三崎町の拝領屋敷を下見した清十郎は、その広さに驚いた
「子之助、そなたに用人を頼む」
「私でよろしいので」
「良い、子組の頭を決めてくれ」
「承知しました」
「紫乃もこちらに移すから、敷地の入口近くに庵を作るよう棟梁に伝えてくれ」
「日本橋の屋敷の庵は、どうされますか」
「紫乃と話したのだが、宗庵殿の弟子に腕の良い者がいるらしい。そやつを置くつもりじゃ。親父殿も隠居されて老け込むこともある。病になったときに心強いであろう」
「左様ですな」
「早々に引越しせねばならぬが、干支組に働いてもらわねばならぬこともある」
「何かございますか」
「上様がの、旗本御家人の不行跡を探索せよとのことでな。近頃は博打は元より女衒のようなことをやっておる者がおるそうな。相手が多いが探ってくれ。目付就任は四月だが、その前に探索だけは済ませておきたい」
「承知しました」
三月の寒さも緩みだした頃、引越しが終わった
新しい屋敷では、下働きも増え賑やかな声が響いていた
「殿、黒鍬者の頭が挨拶に来ておりますが」
「通してくれ」
「初めてお目にかかります。黒鍬頭 佐田金兵衛と申します」
庭に傅いた佐田金兵衛と連れの女子が一人
「佐田と申すか。そこでは遠い。上がれ」
「え、いえ、ここで」
「では、わしが庭に降りることになるが」
「それは困ります」
「であろう。良いから上がれ。誰かすすぎを持て」
仕方なくすすぎを使い廊下に座った二人であったが
「何をしておる。座敷に入れ」
「い、いえ。ここで十分にございます」
「障子が開いたままでは寒いゆえ、早く入れ」
恐縮しながら、おずおずと座敷に入ったが、落ち着かない
「やっと話ができるな」
「黒鍬頭の佐田金兵衛と申します。これにおりますのは娘の花でございます。お見知りおきを」
「そうか。で、本日は挨拶に参ったのだな」
「はい、新しいお目付が就任されたとお聞きし、ご挨拶に参りました」
「就任は来月じゃよ。黒鍬者といえば、道や橋の工事などをしておるな」
「はい」
「じゃが、その昔は忍びであろう」
「遠い昔の事でございます」
「忍び技はなくしたか」
「正直に申しますと、未だ技は残っております」
「ほう。残っているか」
「時折、若年寄さまからご下命がございますれば」
「なるほど。その技、わしにも貸してくれぬか」
「我らお目付配下でございます。いつにてもご下命くだされば」
「黒鍬者は何人おる」
「およそ四百」
「心強いの。旗本御家人の不行跡を探って欲しい。探るだけで良い、危ないまねをする必要はない。できるか」
「承知しました」
清十郎は、文箱から巾着を出した
「ここに五十両入っている。使いやすいように小粒にしているゆえ、嵩んでいるが、これを探索に使ってくれ」
驚きの顔で佐田と娘が見上げた
「どうした」
「いえ、これまで金子など頂いたことがないもので」
「わしも以前は父の御用で諸国を探索に回ったことがある」
「はい、お噂は聞いております」
「探索には金がかかる。それゆえ渡すのじゃ、遠慮せず使ってくれ」
「よろしいので」
「何か分かったら、誰でも良い、屋敷に寄越してくれ」
「では、娘の花を繋ぎに使います」
「わしが留守の時は、子之助」
「ここに」
「この者へな」
「承知つかまつりました」
黒鍬の長屋へ帰った佐田金兵衛は、興奮覚めやらず配下の小頭を呼び出した
「新しくお目付になられた夏目様に会ってきた」
「どうでした」
「流石は大目付様のご子息、これまで諸国を探索されてきた経験が懐の深さを物語っておった」
「どのように」
「まず、座敷に上げられた」
「なんと。庭ではなく座敷に」
「そうじゃ。今までのお目付とは違うぞ。それに夏目家には干支組という忍びがおる」
「噂には聞いておりますが、御庭番でさえも舌を巻く技量とか」
「左様、それでな旗本御家人の不行跡をさぐれと下命があってな。ほれ見よ。五十両もの探索費用をくだされた」
「なんと。若年寄さまでさえ、頂けぬのに、それも五十両とは」
「良いか皆のもの。これからは夏目様の御用を優先する」
「承知。早速探りを入れましょうぞ」
引越しが済んだ三日目のこと。徒目付組頭 松下重蔵が訪ねてきた
「お目付はいらっしゃるか」
「どなたてござる」
「徒目付組頭、松下重蔵と申します」
「暫くお待ちを」
「清十郎さま、徒目付組頭が訪ねて来ました」
「通してくれ」
「お初にお目にかかります。徒目付組頭、松下重蔵と申します」
「徒目付は今何人おる」
「四十人おります」
「それぞれが目付からの下命を受けておるのか」
「我ら組頭三人に、まず下命がございます。我らより徒目付にまた下命いたします」
「なるほどの」
「聞くところによれば、旗本御家人の内偵を黒鍬者に下命されたとか」
「耳が早いの」
「我らにも下命頂けぬと困ります」
「わしが目付に就任するのは来月じゃよ。それまで徒目付に下命などできぬわ」
「ならば何故、黒鍬者に下命なされたので」
「若年寄、佐々木丹波守殿の了解を得ておる。そなた、わしに意見するために来たのか」
「あ、いえ、そういう訳ではございませぬ。そういうことであれば納得致しました。では来月より、よろしくお願い致します」
そう言って屋敷を辞した
「子之助、聞いておったか」
「はい」
「あやつ、どのような男か探れ」
「承知」
干支組と黒鍬者に探索を任せ、清十郎は久々に町に出た
浪人風の着流しに、来国光二尺二寸九分を落とし刺しにして、鉄扇を持った
ぶらぶらと深川へと向かっていたが、人混みの中から商家の小僧が目の前に立った
「何用かな」
「お侍さま、お助けください」
「何を助けるのだ」
「お店に侍が来て刀を抜きそうなんです」
「どこのお店だ」
「そこの但馬屋です」
小僧に引かれるように但馬屋へ入った
「ですから、先程から申します通り、山名様の知行米は能登屋さんの係で、私共では扱えないのですよ」
「そんな事は分かっておる」
「でしたら能登屋さんへ行ってください」
「能登屋で借りれるなら、ここには来ておらぬ」
「能登屋さんで何年先まで借りてますので」
「たった十年だ。にも関わらず、もう貸せないと来た。だからここへ来たのだ。もう十年先を但馬屋へ任すゆえ頼む」
「山名様、知行米の借り上げは十年と決まっております。それ以上は無理でございます」
「うぬら、天下の旗本が、こうして頭を下げておるのだぞ。どうしても無理というなら」
と刀の鯉口を切った
「お主、その刀を抜けば腹を切ることになるが。どうする」
「なに、浪人風情が余計な口を挟むでない。お主は何者だ」
「わしか、わしはここの用心棒じゃ」
「なんだと。ならばお主から斬り捨ててやろう」
「止めておけ」
と言う間もなく山名が抜いた。清十郎の刀は鞘の中である
「なんじゃ、抜かぬのか。もしや竹光か」
「お主程度なら、この扇で十分かの」
「愚弄しおって、勘弁ならぬ」
と斬りかかってきた
清十郎にしてみれば、刃風は遅い。鉄扇で刃を叩き、そのまま頭を叩いた
山名は気を失って倒れた
但馬屋の騒ぎに野次馬が増え、誰かが役人を呼んだのか同心と岡っ引きがやって来た
「但馬屋、大丈夫か。ん、倒れているこいつか」
「はい」
「何で倒れてる」
「こちらの方が、お助けくださいました」
「なに、え、夏目じゃないか」
「おお、山田か」
後ろから岡っ引きが山田の袖を引いた
「何だ」
「夏目様、五千石の旗本ですよ、来月からお目付になられる」
「そ、そうだったな。夏目殿、何故ここに」
「何だ、その言い方は。道を歩いていたら、その小僧に呼び止められてよ、侍が刀を抜きそうだと言うもんで。そういえば、小僧、名は何という」
「佐吉です」
「佐吉よ、なぜわしを呼び止めた」
「通りで誰かいないかと探しておりましたら、昨年の暮に浅草寺の門前で、浪人五人ばかりをバタバタと倒されていた貴方様を見つけたので」
「そういうことか」
「それでここに」
「そうだ、この侍は旗本らしい。お主の管轄外だ、徒目付を呼んでやれ」
「左様ですか、おい文太、呼んでこい」
「後は任せた」
「おいおい、どこへ行く。ではなかった、どちらに参られる」
「昔馴染みだ、そんな他人行儀な話し方は止めようぜ。親父殿の隠居屋敷に行こうと思ってな」
「そ、そうか、ではまた」
「山田様、あのお方は」
「ほんの数年前に知り合ったんだが、当時は旗本の次男坊でよ、奉行所の手伝いもやってくれたんだが、今では五千石の旗本様よ」
「五千石・・・ですか。知行米はどちらの扱いでしょうね」
「なんだ、商売っ気を出しやがって、そんなことは本人に聞け」
日本橋、伊勢屋裏の屋敷に着き懐かしくもある門を潜った
「父上はおられるか」
「清十郎さま、大殿はいま大川へ釣りにでかけてまして」
「釣りか、大川のどの辺じゃ」
「白河屋という船宿から出ておいでで」
「ならば行ってみよう」
鎌倉河岸の近くにある白河屋を訪ねた
「ごめん」
「はい。何か」
浪人風の姿からか、店の者は訝しげであった
「父上がここから舟を出して釣りに出たと聞いて伺ったのだが」
「どちら様で」
「酒井と申す」
「ああ、そろそろお帰りになる頃ですよ、お待ちになりますか」
「左様か、ならば待つとしようかの」
半時ほどして、スズキの大物を提げて帰って来た
「父上、大物が釣れましたな」
「なんじゃ、清十郎、来ておったのか」
「屋敷に伺ったらここと聞いたもので」
「女将、これをな料理してくれ」
「はい、かしまりました」
「清十郎、まぁ上がれ。ここの料理は美味いぞ」
「では、ご相伴にあずかります」
スズキは半身を刺身に、残りを焼物と細切にして膾で膳に出された
「これは、美味そうな」
「食べてみよ」
「うん、これは美味い」
「であろう。武家の飯に慣れておったが、隠居して、ここの飯を食ってみると美味いので驚いた。それからは、ここを贔屓にしておる」
「隠居されて、無聊をかこっておられるのではと心配しておりましたが、釣りは良いですな」
「寅乃助に勧められてな」
その時、廊下の先で女の悲鳴が聞こえた。
清十郎たちの部屋にいた女将の元に女中が走ってきた
「女将さん、お侍が刀を抜いて暴れております」
驚いた女将は慌てて向かった
「清十郎、行ってやれ」
鉄扇だけを持って向かった清十郎は、旗本らしき侍が、刀を抜いて女中に向けていた
「待て待て、町家で刀を振り回すとは穏やかではないな」
清十郎を浪人と見たか
「なんだ貴様、邪魔だてすると、お主も成敗してくれる」
「何があった」
「この女中がぶつかって来たのよ。直参旗本に対して無礼であろう」
「客が増えておる。女中も忙しいゆえな。お主も酔っておろう、許してやれ」
「やかましい」
「その者を斬れば、お主も腹を斬ることになるぞ」
「馬鹿を申せ、この松岡喜三郎、小納戸役で将軍のお側に仕える身じゃ、貴様も無礼打ちにしてくれる」
と斬りかかってきた。そろりと避け松岡の後頭部に鉄扇をみまい、松岡は昏倒した
これを見た同輩と見える旗本が
「松岡、大丈夫か。貴様、どうなるか分かっておるのか」
「お主も刀を抜くか」
そこへ、酒井が呼んだか徒目付が駆けつけた
「何事であるか」
「誰じゃ、貴様」
「徒目付、松下重蔵である。静まれ」
「徒目付か、そこの浪人がの松岡を倒しおった。召捕れ」
「なに・・・これは、夏目様」
「何をしておる。早く召捕らぬか」
「このお方を知らぬのか」
「浪人風情など知るものか」
「浪人ではない。来月よりお目付になられる夏目清十郎様だ」
「な、なに」
「お主、名は何という」
「竹山精左衛門」
「やはり小納戸組か」
「さ、左様」
「覚えておこう」
「松下か、奇遇だの。こやつ酔った上で刀を振り回し女中を斬るところであった。召捕って引き立てよ。お主の手柄でな」
「はっ」
部屋に戻った清十郎に、女将が礼を言った
「あのように暴れる者が多いのかの」
「近頃は多くなったように思えます」
「そうか、今後もあのような輩がいたら、徒目付でも私の所でも良い、誰かを寄越してくれ」
「ありがとうございます」
「さて、清十郎、帰るとするか」
「はい」
隠居屋敷に戻った清十郎に
「何か聞きたいことがあるのではないか」
「はい。城中でのことで、気を付けることがあればと思いまして」
「そうか、見習い奉公もしておらなんだからの。城中では茶坊主に気を使え」
「茶坊主に」
「そうだ、これを渡そう」
「これは、また小さな扇ですな」
「城中では、金子を使わぬ。その代わりに、この扇を使うのじゃ」
「金子の代わりですか」
「左様、人によって違うが、わしは一つ一朱にしておった。扇に名を書いておけ」
「どのように使うので」
「茶坊主はな、城中くまなく歩き回るゆえ、色んな噂を拾ってくる。価値のある話であれば渡すのじゃ。月末に茶坊主が屋敷に来て、扇を返す。その本数で金子を渡せば良い」
「なるほど、そのような仕組みだったのですね」
屋敷へ帰ると子之助が、徒目付松下重蔵の探索結果を報告した
「殿、松下重蔵という男、謹厳実直過ぎるところがあるようで、それは良いのですが女房が病弱で医者の薬代にも困っているようです。それもあって手柄を立てて出世を狙っているようです」
「掛かっている医者はどうだ」
「どうも藪医者と評判で」
「分かった」
月が変わり四月になった
登城した清十郎は目付部屋に入った
「本日より目付を拝命致しました夏目清十郎と申します。よろしくお引き回しのほどお願い申し上げます」
すると目付組頭 高森三太夫が
「聞いておる。上様からもよろしく頼むと申された。これより一緒に上様に謁見する。付いて参れ」
謁見の間に入った高森と夏目に対し
「おお、本日からであったの。清十郎、頼むぞ」
「はっ」
「三太夫、清十郎が旗本御家人の不行跡を探索しておるはずじゃ。目付全員で力を合わせ結果を出すようにな」
「はっ」
「一年で終わらせよ。その後、三太夫には長崎が待っておるぞ」
長崎と聞いて三太夫は心踊った。長崎奉行は目付にとって垂涎の役職である
目付部屋に戻った高森は
「夏目殿、先程上様が申された探索の件であるが、書付はあるかの」
「はい、ここに」
と大きな風呂敷包を出した
「目付就任まで、日がございましたので、手の者を使いこれだけ集めました」
「これは・・・凄い数じゃの」
「不行跡も小さなものから、見過ごせぬ大きなものまでございます。私だけでは処理しかねますので、皆様のご助力を賜りたく」
「皆のもの、聞いたか。手分けして助勢せよ。夏目殿、どれを扱うかは、各目付に任せて良いか」
「はい。大きなものを扱えば、それだけ手柄となりましょう。お好きに選んでくだされ」
それを聞いた目付衆は我先にと書付に目を通した
高森が先に大きなものを選び、順番に選んだ残りは、賭場を開いている程度のものであった
下城が近い時刻、目付部屋の外に茶坊主が座った
「夏目様、若年寄佐々木丹波守さまがお呼びでございます」
「あい分かった」
廊下に出て茶坊主の後について歩きながら
「茶坊主殿、そなた名は何と申す」
「利長と申します」
「利長殿は長いのかの」
「十年ほどになります」
「十年か、なれば色々な噂など聞こえて来ような」
「はい」
「その噂話、わしにも教えてくれぬかの」
と小さな扇を二本渡した
「承知いたしました。若年寄さま詰めの間はこちらでございます」
「おお、夏目殿、呼び立ててすまぬな」
「いえ、何かございましたか」
「上様から、夏目の様子を聞かれてな。目付部屋ではどうであった」
「探索した書付をお見せして、選んで頂きました」
「ほう、みな助勢するようだの」
「大きな不行跡を挙げれば、出世の道に繋がりますので」
「なるほど。上様も高森に長崎という餌を蒔いたからの」
「私も助かります」
「ところで、雪乃との婚礼じゃがの」
「はい」
「来月七日、仲人を青山様が請け負ってくれたゆえ準備をな」
「畏まりました。よろしくお願い申し上げます」
下城し屋敷に戻った清十郎は黒鍬者の花が来たことを聞いた
「殿、初登城はいかがでございましたか」
「肩が凝るの。わしには合わぬ、花は何か申していたか」
「詳しいことは分かりませぬが、御家人に金貸しをしている者がいるらしいようで」
「御家人が金貸しか。軽輩で知行も少ないはずだが、元手はどうしているのか。名は聞いたか」
「はい。三島左近とかいう者です」
「探ってみてくれ。裏で糸を引いている者がいるはずじゃ」
「承知しました」
「それとな、佐々木家との婚礼日が決まった、来月七日、仲人は老中青山様らしい」
「青山様が仲人に。それはまた大物がいらっしゃいますか」
「婚礼も肩が凝りそうじゃ」
干支組に三島左近の探りを命じて三日目、詳細な報告があった
「三島左近の裏に愛宕下で香具師を束ねている口入れ屋の権蔵という者が付いていました」
「香具師の元締めか」
「はい。評判は悪いようで、束ねている香具師も荒くれ者がほとんどです」
「金の取立はどうなっている」
「取立も厳しいのですが、利息がべらぼうに高いようで、返せない者は女房か娘を攫うことも」
「明日、町奉行に会ってみる」
翌日、町奉行の詰所に南町奉行大岡忠相を訪ねた
「大岡殿、ちと相談がごさる」
「何かの」
「私、いま不行跡の御家人を探索しておりますが、その裏で糸を引いている者がおりまして」
「それは町人でござるか」
「はい、香具師の元締めで」
「なるほど」
「御家人は私の方で捕縛致しますが、香具師の方は奉行所の方でお願いできないかと」
「香具師の居所は」
「愛宕下で口入れ屋をやっている権蔵という者です」
「御家人の不行跡の内容は」
「金貸しですが、返せぬ者の女房、娘を攫う女衒をやっております」
「承知した。捕縛するなら同じ日がよろしかろう。与力の原田に命じておくゆえ、夏目殿も徒目付に打合せするよう伝えてもらいたい」
「承知した」
清十郎は屋敷に帰り早速、徒目付松下重蔵を呼んだ
「南割下水に住む御家人、三島左近を捕縛してもらいたい。罪状は金貸しと女衒行為じゃ」
「承知しました」
「捕縛するについては、香具師の元締めが絡んでいるゆえ、そちらは南町奉行に願った。与力の原田と打ち合わせして捕縛にあたってくれ。それとな、これは今後の探索費用として使ってくれ」
「こ、これは」
「五十両入っておる。女房の薬代に困っておろう。それにも使え。それと、女房の掛かりつけ医者だが、今の医者では駄目だ。この屋敷の入口に庵があろう。南蛮医者がおる。そこに替えろ。ここが
来にくいのならば、日本橋伊勢屋の裏にも、わしの元住まいがあっての、そこにも南蛮医者を置いてある。どちらでも良いぞ」
差し出された金子と清十郎の話を聞いて、重蔵は涙した。
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