第5話
図書室には多くの言語の書籍が置かれてあるのが見て、いろいろな種類の書籍が置かれてあるのが見ている。
「いろんな書籍があるな……あ、これすごいかっこいいな」
大陸間横断列車の強みを持っているが、それをきっかけに語学を学び始めたりした乗客がいるほどだ。
アンはロジェ公国の主な観光地をまとめた本を取り出して読み始めた。
ロジェ公国は大陸最大の国土を持ち、それぞれの地域に独自の文化を持つ。
そのなかでも首都ユーリエブクルの芸術文化はとても美しく、その絵画などは色んな国の美術館を巡っている作品があるほどだ。
芸術的な建築物や街並みが多く、観光地として利用されている地区も多く存在する。
「きれいだな~、ここに行ってみたい!」
そのなかでも首都ユーリエブクルの南東にあるハインブルクに十五年前の戦争を後世に残すために建てられた資料館がある。
そこに壁面いっぱいに敵味方関係なく犠牲者の名前が刻まれた場所があり、それを見に行くのが旅の最大の目的の一つだ。
(お母さんの名前を探してみたい……それを学院の同級生にも知ってほしい)
本を閉じて戻すと、すぐに図書室へ戻り、食堂車に昼食を食べることにした。
アンの持っている懐中時計が午後二時五十七分になろうとしているが、まだ本を読んでいたいと思ってからは座席に座り一冊を読み始めた。
それは発刊が十年以上前の本でとてもきれいな状態だった。
「こんにちは。あなたはどこから来ていたの?」
目の前に淡い金髪に淡い紫色の瞳を持つ少女がこちらへやって来ていた。
着ているのは紺色のワンピースを着ていて、控えめだがとても高貴な雰囲気がこちらへ見ているのが見えたのだ。
「こんにちは。わたしはエリン=ジュネットのアリ=ダンドワから」
少女はとても明るい笑顔を見せて、手を組んで話している。
「わたしもよ。帝国まで行くんだけど、まだ時間がありすぎて困ってしまうの。名前を言ってなかったわ、ヴァイオレット・エレナ・マコーレーと言います」
アンはそれを聞いて驚きのあまり持っていた本を落としそうになった。
帝国へ向かう少女の姓はエリン=ジュネット王国では外交官を多く輩出しており、さらにはローマン帝国の皇后を輩出したフェラーリ公爵の縁戚としても知られている。
「え、あの」
「あ、そんなにかしこまらないで、あなたって同じ学院にいる子よね?」
「え……ああああ! マコーレーさんって、六年のときに同じクラスだった」
「うん。そうだよ」
「わたし、アン・エリー・アンダーソン、覚えててうれしいよ。留学に行くんだね」
ヴァイオレットは数年前にクラスメイトで、アンは思い出してからはホッとしたようにこっちを見ていた。
「これからどこに?」
「あ、ハインブルクっていう場所、その後にユーリエブルクに行くつもりだよ」
それを聞いてとても楽しそうなことをしているのが見ていた。
「そうなんだ。確か、あそこって」
彼女が思い出したように話をしている。
「うん。弔いの場所へ行くんだ」
「そうなのね」
それを聞くとヴァイオレットは何か察してくれたみたいだ。
「あれ。そうなると、マコーレーさんは? 短期留学?」
「そうなの。短期の語学留学に行くんだ。あと親戚の結婚式があって、父と兄を代表して出席することになっているの」
二人は図書室を出てから二等車両のテラスに出られる場所で、連結された隣の車両は二等よりも安価な三等車両だった。
「風邪が強くないかしら? でも、景色はいいわね」
「うん。ここはとてもきれい」
風がとても強いのが見ているのがわかっていたんだ。
青空と白い雲がきれいでそれを縁取るように山の稜線は緑で覆われている。
沿線の道路から自動二輪車に乗っている少女を見えた。
それから景色は変わっていき、田畑が広がる風景に変わっていく。
都会暮らしの彼女たちにはそれが新鮮に見えるようで、とても楽しいみたいだったのが見えたのだ。
そしてその麓には青々とした田畑が見え、子どもたちが道を走っているのが見えた。
「あ、きれいだね」
「かわいい! あの子たち」
ずっと前からこういった風景を見るのが好きで、幼い頃に車の荷台に乗っていたときがあったのを思い出せるからだ。
「スピードが遅くなってきたし、そろそろ停車駅かな」
「そうじゃないかな。うちは先に戻るわ」
そう思いながら車内へと戻って、次の停車駅サーディルアー駅で三十分間、貨物列車との待ち合わせをするために停車する。
最初の停車駅サーディルアー駅へと到着したようで、ヴァイオレットは部屋に戻っていったようだった。
これから三十分間の停車をするみたいで、車内アナウンスが終わってからは車掌の声が聞こえてきた。
「サーディルアー駅でございます。シュヴァルツァー線にお乗り換えの方はこちらで、お乗り換えができます!」
午後三時になると、車内はとても混雑し始めた。
この駅はシュヴァルツァー港方面への路線へ乗り換える人たちが乗降口に向かっているのかもしれない。
多くの乗客が別の列車に乗り換えをしたり、そのまま下車したりする人々がいた。
アンはその混雑した車内にいた。
これから自分の宿泊している部屋に戻ろうとしていたときだった。
「すみません! 通ります」
身動きがとりづらいので、なかなか前に進むことができずにいた。しかも床には所々に大きな荷物が置かれているので、見えないとつまずいてしまう。
すぐに大きな荷物を持った自分の父と同じような年代の男性が足早にこちらへやって来た。
「邪魔だよ、嬢ちゃん! そこをどいてくれ」
「すみません‼」
アンはすぐに人の合間を縫って謝りながら歩いて行くのが見えてきたみたいだった。
落ち着いて動いていくことの方が良いなと感じて、すぐに行くことがケガもしないで迷惑をかけないで行くことができる。
恐る恐る前に進んでいくと、なんとか女性専用の個室の前まで戻ることができた。
「ふう……何とか戻れた……」
ハーフアップにしていた黒髪が邪魔になってきたので、部屋に戻ってヘアスタイルを変えることにした。
洗面所に向かうとすぐに編み込みのハーフアップをほどき、愛用している櫛で癖がついた髪に通していく。
少しだけ癖がマシになってから、髪を一つに結ってから、その髪を三つ編みにしてクルッと結び目に巻きつけてピンで留める。
「上手くできた~!」
彼女は髪を高い位置でまとめている。ここ最近は大人っぽく見えるようになったかもしれない。
鏡でその出来映えを見てから、廊下に顔を出してみた。
「うわ……ものすごく混んでる……」
車内にはこれから新しい乗客を迎えるために清掃員が数人入っているらしい。
下車したり乗客はホームに出ているが、それ以外の乗車しようとする乗客が待っているみたいだ。
アンは持っている懐中時計を開けて時刻を確認している。
「まだ出発するまであと三十分くらいだ」
そのときピアスに連絡が入った。
「あ、お父さん、どうしたの?」
『アン、準備をしたか?』
「してるよ。あと三時間くらいだし、どうする?」
次の停車駅はロジェ公国国境にあるアルバティア駅へ向かい、三時間後の午後六時に到着する予定だ。
ウィリアムと一緒にダーツをすることになって、アルバティアに着く直前まで得点を競うことにした。
「いいよ! わたし、ダーツは得意なんだからね。覚悟しててよ!」
『お互い負けたくないね~』
といい、アンは通話を切り、すぐにトランクと帽子を片手にダーツとビリヤードができる部屋に向かった。
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