第3話 「あっぶね!なんだこれ」

 大戦争まで残された有余は三日間だった。

 一日目は武器を調達するために武器屋に行った。中に入るといらっしゃいという言葉とともに威圧が飛んできた。この国は様々な武器屋があり、武器によってブランドがついている者もあるまたその専門店も。でも俺が入ったところは裏路地にある小汚い小さな武器屋だった。

 「おお!ロンドじゃねぇか。いつぶりだよ!」

 先ほど目も見ずに威圧を飛ばしてきた大男とはとってかわって昔なじみの友人を見る目になった。

 「久しぶり、グラン。にしてもここもお前も変わってねぇな」

 この武器屋の店主兼管理人はグランという男だ。こいつと俺は昔からの知り合いだった。そして俺の秘密を知る一人だ。

 「うるせーよ。お互い様だろ。ところでお前・・・今まで何してたんだよ」

 「いや~それが自分の店が忙しすぎてなぁ~」

 グランは俺のことを疑いをかける目でじーっと見る。

 「まぁそういうことにしといてやる。それよりお前が来たってことはあの武器たちが目的か?」

 疑いの目から鋭い目線に変わる。

 「あぁそういうことだ。事情はいろいろあるが、また戦争に出ることになった」

 「・・・そうか、ついてこい」

 グランがカウンターを開け部屋の奥に消える。ついていくとまっすぐの廊下に最低四つ以上鍵のかかった鉄格子がいくつも並んでいた。

 「・・・ここも相変わらずだな。前も言ったがこんなに厳重にしなくてもいいんだぞ」

 「あほか!こんな伝説級の武器が盗まれでもしたらこの国が亡びるわ」

 「・・・そ、そうか」

 グランの威圧に少し圧倒されたが、俺がここに預けている武器を作った人はもうこの世にはいない。盗まれ同じ武器を作ろうにも人がいないんじゃどうしようもない。それにグランがさっき言ったように、素人が使ったとしても武器単体がそもそも強すぎるので国レベルならあっという間に更地にできてしまう。俺自身グランに対して悪いと思いつつも厳重に扱ってくれるのはありがたいと思っている。 

 グランが一番最後の鉄格子を開け、ドアの前で俺を前に出す。今俺の前にあるドアは持ち主の魔力で作動するドアだ。俺は手を前に出し魔力を込めるとドアに描かれた文字が浮かび上がりドアが開く。とそこには三つの武器が・・・あれ?二つ多い?昔俺が店長に預けた武器は三つだけのはず。だがそれ加えて見たこともない二つの武器が増えていた。

 「なぁグラン、武器・・・一つ多くないか?」

 「あぁそれか。なんかお前がこの店に来なくなってからすぐかな武器の手入れをしようと別の保管部屋に行こうとしたんだが奥のこの部屋から光が漏れていてな、この店には俺しかいないはずだから電気がついているはずはないんだよ。そこで気になって見に来たんだ。そしたら、知らない武器が増えてたってわけだ。

 増えていた武器それは二つの短剣。片方を手に取ると不気味な感覚に陥る・・・読むものがない?俺はそのまま手に取った武器を持ちあげるともう片方の武器がぶら下がる形で落ちてきて足の甲ぎりぎりで止まる。

 「あっぶね!なんだこれ」

 「あーその武器な、柄頭を見てみろ」

 グランに言われた通り柄頭を見ると最初に手に取った短剣と落ちてきた短剣が錆びた鎖のようなものでつながれていた。一見美しく、見とれてしまうほどの武器だが何か気持ちが悪いようなどこか不気味な気配がする武器だった。

 ロンドはそっと武器を置きとりあえずは使わないでおこうと思った。

 「今回は何を持っていくんだ?」

 「とりあえず弓を持っていくよ」

 「その双剣はもっていかないのか?」

 「うん、持っていかない。俺が触れても何も読むものがなかった・・・」

 「おいおいそれって、誰も使ったことがないってことか?」

 「ああ、使い手どころか作った人ですらわからなかったからな」

 「そうか・・・」

 何はともあれひとまずこの武器は置いておくとして、今回は大戦争と言われているものの人と人との戦いだ魔物や厄災が襲ってくることもないだろう。それに前線に出ることもないだろう。そもそもロザリーは俺のこと飲み屋の店主としか思ってないようだし。サポート兼遠距離型の弓だけでいい・・・一応王冠も持っていくか。

 「やっぱ王冠も持っていくよ」

 「・・・これを使うのか」

 グランが目の奥に若干の恐怖を浮かべこちらを見てくる。

 「大丈夫だ。いざという時にしか使わないから」

 「・・・ならいいか」

 どちらにせよ俺が止める権利なんてないんだがな。とグランがつぶやく。グランがおびえる理由もわかる。なぜならこの王冠の能力を知っているからだ。それほどに強力な能力だった。

 「安心しろ、俺だって悪目立ちしたくはないしこんな武器使ってたらいやでも目立ってしまうからな」

 「そうか、まぁ気を付けて行って来いよ」

 「ーーー多分、いや絶対お前は使うよ。そういうやつだからなーーー」

 「ん?なんか言ったか?」

 「あぁ、いや何でもない」

 「空耳か、じゃあ行ってくるわ」

 「おうよ!」

 グランのつぶやきはロンドに届くことはなく武器調達の一日目は終了した。

 

 二日目、この日は朝から敵国のベレティナ大帝国に立ち向かうべく結成されたグッドオーラスの作戦会議だった。急遽入隊することになった俺とエレナは少しでも早く作戦を理解するために必死だった。特に戦力や能力を見ればエレナは前線に出ることとなるだろう。俺よりさらにその場の戦況、作戦のことを深く頭に詰め込まなければならない。と少し心配の目線を送っていると、それに気づいたエレナがこっちによって来た。

 「ロンドそんなに心配しなくても大丈夫ですよ。こういう経験、私は初めてではありませんし」

 「そうなのか?すごいな。俺なんか作戦を理解するので精一杯なんだが」

 「・・・そうなのですか?」

 エレナが少しびっくりしたように目を見開く。

 「あぁ、何ならこういう戦争に参加するのは初めてだからな」

 そんなことを話していると作戦を伝え終わったのかロザリーがこっちにやってきて声をかけてくる。

 「作戦はしっかりと伝わっているか?」

 「うん、伝わってるよ。嫌というほど」

 「ならいい、くれぐれもおいて行かれないようにな」

 「お気遣い感謝するよ」

 ここではグッドオーラスのトップとして振舞ってはいるが、面倒見がいいのかちゃんと気を使ってくるあたりロザリーの優しさが垣間見れた。

 そのあとも作戦をただひたすらに覚え、その日の作戦会議は終わった。そして帰り道。

 「にしても作戦会議があんなに大変なものだとは思わなかったな」

 「明日も今日に続いて作戦会議らしいですよ」

 「まじかぁ~今日は帰ったらすぐ眠りにつけそうだな」

 「お疲れ様です」

 そんな会話をエレナとの帰り道の途中でしていると。うちの店の前で臨時休業の張り紙を読んでいるのか突っ立っている人を見つけたその男は雨の日でもないのにローブを頭までかぶり少し不気味な雰囲気を放っていた。どちらにせよここまで足を運んでいただいた大事なお客様だと、謝罪の一言でも言おうと声をかける。

 「あの、ごめんなさい今日は臨時休業なので店は開いていないんです。諸事情により一週間ほど開けられないので・・・」

 その男が振り向いた時、少しだけ顔が見えた。なんでこいつがいる?その男は俺の知っている顔だったのだが・・・。俺は即座に店のドアを開けた。

 「とりあえず中に入って」

 「あぁ、そうしてくれるとありがたい」

 飲み屋バルト店内

 「この国の王がわざわざ足を運んできて何の用だ」

 さっきまでローブを羽織っていた。年齢は八十ほど、白い髭がよく似合うこの男はエレナが出してくれた水を一口飲み一息をついた。一見どこにでもいそうな老人に見えるこの男は実にこの国アトラス王国の王その人だった。そんな人が護衛もなしに来ていた。

 「はぁ~助かったよロンド君」

 「で、なぜこんなところに護衛もなしでただ一人で来たんだ?」

 「ああ、それなんじゃが、君が大戦争に参加すると小耳にはさんでな。折り入って君に頼みに来たんじゃ」

 「それ、俺に断る権利ない奴だろ」

 「よくわかっているじゃないか!さすが私の親友じゃ」

 「親友になった覚えはない」

 「まぁまぁ、で君に聞きたいんじゃがベレティという女の子を知っているか?」

 「ベレティって敵国の?」

 「そうじゃ、国が別々になってあの子もとうとう独り立ちするほどに大きくなったんじゃなぁと最初、私は思っておったじゃが日がたつにつれベレティナ大帝国そのものが貿易などの話や資源の話で少しづつ圧をかけてきての最初はさほど気にならんかった。ベレティちゃん反抗期か?と思っていたぐらいじゃ」

 「お、おう」

 「だが先の宣戦布告で確信がついた。何かがおかしいと」

 王は敵国の王女様を完全に孫を見る目で見ていた。

 「いや、貿易うんぬんかんぬんの時点で圧をかけられた時点で気づけよ」

 なに反抗期すらも愛らしいって感じの目をしてやがんだよ。

 「そこでじゃ、丁度悩んでいた時にロンド君の大戦争の参加が耳に入ってきたわけじゃこれはもう頼むしかないじゃろ」

 こいつさては俺が参加してなくても頼むつもりだったな。都合のいいように解釈しやがって。

 「で具体的な内容は?」

 「ベレティを救ってやってくれ」

 「え?それだけ?」

 「ああ、わしは前線に立つわけでもなければ大戦争に参加するわけでもない。戦争に関してはグッドオーラスに一任しておるからな。ベレティを操る何かが裏にいおるのかそもそもあの子はしっかりした子じゃ、自国の兵や国の民を危険にさらすことなぞ絶対にしない。とすると何かの脅しもしくは能力による催眠を受けている可能性もある。どちらにせよ何もわからん今の状況でわしができるのは君に頼ることぐらいなのじゃよロンド君」

 「そういうことか・・・」

 まぁどちらにせよロザリーにその話を聞いてから何とかできないかと考えていたところだし、国王に恩を売っておけば後で何か役に立つだろうと思い受けることにする。

 「わかったその依頼受けよう」

 「本当か!そういえば先ほどなぜ護衛もなしにここに来たのかと問うたじゃろ、それは私情の話だからじゃ。この国を守るための依頼なら話は別じゃが、別の国どころか敵国の女王を守れなんて国を挙げてまで言えぬ。だからこれは私情の問題」

 「だからわざわざこの時間帯に王国を抜け出してまで俺に頼みに来たということか」

 「そうじゃ」

 「王様もなかなかのお人よしだな」

 「じゃあ、頼んだぞ」

 「頼まれたよ」

 王様は再びローブを羽織ると。

 「おっといかんいかん忘れるところだった」

 王様はローブの中から何やら仮面のようなものを取り出す。

 「ロンド君、君にこれを渡そう」

 「なんだこれ」

 「仮面じゃよ」

 仮面だった・・・。

 「聞いたところによると君はあまり目立ちたくないそうじゃないか」

 「さっきから俺の情報どこで聞いてるんだよ」

 「まぁまぁ良ければ使ってくれ。君の顔のサイズに合わせて特注で作っておいたんじゃよ」

 ロンドは王様から仮面を受け取った。正面からの見た目は何やら怪物のような鬼のような降格が異常なほどに上がっている気持ちが悪い見た目のお面だった。

 「本当に作らせたんだよなぁ・・・」

 「うむ、作らせたぞ人を退けるにはうってつけじゃろ」

 「まぁ・・・そうか」

 こんな見た目の仮面をつけた奴が現れれば誰も近づいては来ないだろう。

 「もらっておくよ」

 王は「うむ、にあっておるぞ」と言い残し店から出て行った。

 ロンドは「にあってたまるかよ」と言い思いにふけるのだった。

 

 次の日もまた作戦を嫌というほど聞かされあっという間に一日が終わる。エレナに聞いたところ護衛としていく俺はあまり関係のない話が多かったようだ。ほんとに勘弁してほしい。

 その後家に帰り次第ばたりと俺は眠ってしまった。


 どこかはわからない。暗闇が果てしなく続く場所。真ん中には円卓がありそれを囲むように六つの椅子が均等に置かれていた。男は目の前の椅子に座る。男以外に四人がすでに席についていた。一人が口を開く。


 破滅王:「久しいな主」

 主:「久しぶり」

 神撃手:「このタイミングということは大戦争のことですか?」

 勇者:「やはり参加するのか」

 怪物:「いいぜいいぜ!じゃんじゃん殺し合いに巻き込まれてくれ!そして俺を出せ!」

 主:「いや、戦いには参戦するがおそらくお前を使いことはないな」

 無名の怪物:「なんで!」

 主:「今回は人と人との戦いだ怪物を出すわけにはいかない」

 勇者:「そうだぞ怪物お前の出る幕はない今回は私の番だ黙ってみていろ」

 主:「いや勇者も使わない今回はあくまで後方支援だからな」

 勇者:「な!」

 主:「今回使うのは王冠、弓だできるだけ使わないようにするがいざとなったら頼むよ二人とも」

 破滅王:「仕方ない」

 神撃手:「わかりました」

 怪物:「ところでよ主その一席は何なんだ?」

 主:「わからん俺が今までに読できた人は王、怪物、神撃手、勇者だけなはずだが逆にずっとここにいるお前らはあったこともないのか?」

 破滅王:「私はない」

 神撃手:「私もずっと気になってたくらいです」

 勇者:「俺もない」

 怪物:「んだよ誰もわかんねーのかよつかえねーな」

 神撃手:「なんですって?」

 勇者:「なんだと?」

 主:「あぁこれめんどくさい奴だ・・・あとは任せていいか王」

 破滅王:「ああ・・・任された」

 主:「じゃあまたなお前ら!」

 怪物:「おお!またなロンド」

 勇者:「次は俺を使えよ」

 神撃手:「じゃあまた近いうちにロンドさん」

 主:「あぁまたな」

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