第7話 ゴブリン
「ゴブリンの大量発生…、お、これか?」
スマホでギルドの情報を集めているとそれらしいものを見つけた。
なかなか見つからなかったが、どうやら極稀な件であるらしい。
俺とみのりが知らないのも頷ける。
「どーです?」
「えーと、『ゴブリンの大量発生はゴブリンキングの誕生が関係している。ゴブリンキングはゴブリンを大量に発生させ、さらに近衛兵と呼ばれる単体でCランク、連携を取るとAランクに匹敵するゴブリンを召喚する。また【キング】と名のつくモンスターは総じてS級冒険者に匹敵する戦闘能力を持つ。』」
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「「…はぁっ!?」」
いやいやいや、待て待て。
キングを冠するモンスターが生まれる確率は極めて低い。しかもBやAランクのダンジョンならまだしも、ここはDランクの倶知安ダンジョン。
そんな所にゴブリンキングなんてモンスターが現れるわけが無い!
「ギギィッ」
「ギグギィ?」
「ギギァッ!」
調べた情報に唖然としている間も、モンスターは放っておいてはくれない。
しかもここは下層。群れをなしたモンスターがひっきりなしに襲ってくる場所だ。
今回は6匹の武装したゴブリンがこちらに向かって歩いてきた。
武装と言っても粗末な鉄の鎧と鉄の武器ではあるが。
「ちっ、またゴブリンか…」
「これ、まさか本当にゴブリンキングが…」
俺たちの思考も徐々にネガティブな物になって行く。
ゴブリンが近付いてきた。
「《隠密》」
「《隠蔽》」
2人同時に気配を断つ。
2人で頷き合い、一気に距離を詰める。
「「────ふっ!」」
同時にゴブリン達の死角に入り込み、一閃で3体ずつゴブリンを仕留める。
弱点に正確に攻撃すればほとんど力は要らない為、体力はほとんど使わない。ただ、精神力はかなり使っている。
みのりの成長が著しい。対モンスター戦闘であれば俺の実力に追いつき始めている。
「ふう、ここは1度引くべきかもしれないな」
「そうですね、多分このダンジョンで1番深いところに居るのは私たちです。帰りに他の冒険者に注意を促して───」
光となって散りゆくゴブリンを後目に、呼吸を整える。
しかし、みのりの言葉が終わるより早く、遠くから悲鳴が聞こえた。
「助けてくれぇ!!!」
見ると血だらけの男が1人、片腕を庇いながら走ってきている所だった。
そしてその後ろから、とてつもない威圧感が迫ってきていることにも気が付いた。
「《索敵》…ひっ」
意識的に《索敵》を行ったみのりが小さく悲鳴をあげる。
その顔は青白くなっている為、おそらく何らかの危険が迫っているのだろう。
「た、助けてくれぇ!ゴブリンが、ゴブリンがぁ!!」
「グギギギ!!」
「ギギィ!」
男がこちらに近づいてくるにつれ、後ろからとんでもない数のゴブリンが迫ってきていることに気付いた。
そしてその中に数体、明らかに格が違うゴブリンが居ることにも。
「数は50を超えています…。その中に6体、異常な強さのゴブリン。…さらに遠くからゆっくり、ヤバいのが来てます…」
「ちっ…」
思ったより数が多い上に距離が近い。
男を助けて時間を稼ごうにも、50以上のゴブリンに加え近衛兵と呼ばれるゴブリンエリートが居るとするならば俺とみのりでは太刀打ち出来ないであろう。
「グギャアッ!!!」
「ひぃっ…!」
男が息を切らし、徐々にゴブリンとの距離が縮む。
みのりは助けに行こうとしているが、ここに突っ込めば2人とも助からない。
「みのり、今からあの男を助ける。その間にこの爆符を通路に貼れるだけ貼ってくれ」
爆符と呼ばれる、爆発を封じ込めた紙をみのりに渡す。1個5万もする高価なものだが、出し惜しみできる状況では無い。
「はい!どうするんですか?」
「見たらわかるさ。やるぞ」
目を瞑り、男に意識を集中する。
男の周りに俺の魔力が発生し、光を放ちながら高まっていく。同時に俺から急激に魔力が失われていくのが分かった。
疲労感に意識が乱されるが、懸命に集中する。
「はぁはぁ…、しまっ」
「ギギァッ!!」
俺たちまであと40mという所で男が転んだ。
ゴブリンたちが一斉にスピードを上げ、男に飛びかかる。
魔力を練り上げ始めてから約15秒。
やっと、準備が完了した。
「来い…!《転移》…!!」
「なっ!?」
「「「ギ!?」」」
「これは…!?」
俺のすぐ目の前で強烈な光が発生し、直後そこに逃げていた男が現れた。
俺の2つ目のスキルである《転移》だ。
スキル使用までにかなり時間がかかる上に、たった40mの転移で俺の魔力の3分の1を持っていかれる。
今回は俺自身ではなく他人だったこともあり、さらに魔力を消費している。
デメリットが多く戦闘では使いこなせない《転移》だが、それによって今回は男を救うことが出来た。
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