第2話 ピンク色の後輩
北海道の札幌に住む大学生で、今年で20歳になった。
普段は大学生として普通に講義を受け、休日などは冒険者としてダンジョンに潜っている。
今日は休日だし、ダンジョンに向かうつもりだ。
「そろそろ新しい装備が欲しいな…」
ボロボロになった
基本的に短剣を使って戦うため、動きやすい皮鎧を選んだ。この皮鎧に何度も命を救われた為、愛着はある。
「短剣の方も結構ガタが来てるな」
親が遺した金で買った『初心者の短剣』。これといった特殊効果は無いし攻撃力も低いが初心者には扱いやすく評価も高い。
買った帰り道、短剣の刃に鮮血が流れるように夕焼けの光が反射していたのが印象的だ。
柄にもなく軽く素振りしてはしゃいでしまったのを覚えている。
「よし、行くか!」
武器防具を装備し終えその他もろもろの持ち物も持った俺は、自宅のドアを開けた。
目的地は倶知安ダンジョン。札幌から新幹線で20分、難易度はDランクと脱初心者向けだがソロの俺にはぴったり。また、人が少ないのも良い点だ。
◇
「PT《パーティー》募集〜!こちら野良です!」
「ヒーラーいませんか〜!? 今日だけのパーティーメンバーとして雇います! 謝礼5万!」
「
倶知安ダンジョンにつくと冒険者達が元気に活動していた。
ダンジョンは基本、ソロではなく
俺も最初はパーティーを組んでいたが、俺のスキルの問題もあり今はソロでダンジョンに挑んでいる。
「…の…。あの…」
ダンジョン初回入場時、0~5個のスキルと0~5個のスロットが与えられる。
スキルというのは異能力のことだ。ラノベとかでよく出てくるやつ。
対してスロットはその人が持てるスキルの数を表している。1度スキルを取得すると、スキルを変更したりは出来ない。
「あの!!」
「うおっ、なんだっ」
気がつくと目の前で小さな女の子がぷんすかしていた。小さな、とは言ったが身長が小さいだけで18歳以上ではあるのだろう、ここに居るということは冒険者なのだから。
「もうっ、なんで無視するんですかっ!」
「す、すまん。ちょっと考え事してた」
ピンクっぽいリュックに、ピンクの鞘に入った短剣。杖などは持っていないことから恐らく俺と同じ短剣使いの前衛だろう。
クリクリとしたおめめが非常に可愛らしい。
「そうでしたか…、無視してないなら大丈夫です。こちらこそ大声出してごめんなさい」
「いえいえ、そんでどーしたんだ?」
尋ねると、ピンク冒険者は俺の短剣を確認してから少し恥ずかしそうに笑った。
「私は柊みのりと申します! 最近冒険者になりました!」
「おう、俺は叢雲星夜だ。冒険者歴は1年だ。」
「やっぱり!初期の方ですね!」
「あぁ、第1世代には負けるけどな」
話を聞くと、このみのりとやらは冒険者の先輩であり短剣を使う人に色々と指導して欲しいそうだ。
俺の装備がいい感じに歴戦の猛者感を出してくれたのだろう、その先輩に俺が選ばれたわけだ。
「もちろん謝礼として10万を即時に、場合によっては追加報酬もだします!」
「…18歳が10万をぽいっと出してくるあたり世も末だなぁ」
冒険者は稼げる。それこそ初心者でも実力があれば最初から月20万は稼げるのだ。上位になり、高難度ダンジョンともなれば月100万など余裕で超える。
「ふぇっ、足りませんかっ?」
「いや、お金はいい。ただ、俺の知識が正しいかは君が判断してくれ。鵜呑みはするなよ」
「えぇ!? え、いやそれはっ」
俺も割と稼いでいる。
初心者からお金をとるほど困窮した生活は送っていない。
「君がある程度戦えるようになったら、俺と同じように無償で初心者に指導してあげてくれ」
「うぅ、分かりました。ありがとうございます」
どうやら納得はしきれていない模様ではあるが、今日はこの子を育てるとしよう。
たまにはこんな風に過ごしてみるのも面白いかもしれない。
「じゃあ、行こうか」
「はいっ!よろしくですっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます