第305話 面倒な状況
「……お前……なんで……?」
あまりのことに、俺はただ、そういうことしかできなかった。
理解が追いついていない……なんでここに、前野がいるんだ?
「フフッ。来ちゃった」
なんだか子供のように笑う前野。
布団の中に、クラスメイトの女の子がいる。しかも、男子しかいないはずの部屋だというのに……。
「……いやいや。早く出ていってくれ」
流石に俺もヤバいことに気付いた。というか、なんで前野は入ってきてしまったんだ。
俺は慌てて今度こそ布団の中から飛び出る。俺の布団の中から顔だけ出して、前野は不満そうな顔をする。
「なんで? せっかく、仲直りしようと思ってきたのに」
「……仲直り、って……お前……」
「外川さんのこと。気にしていないよって、伝えに来たんだ」
その言葉を聞いて、俺は少し安心してしまう。前野の表情からして、嘘をついているようには見えない。
「……そうか。その……なんか、ホントに、悪かった」
「大丈夫だよ。後田君のことは、わかっているし」
「……わかっているって、何が?」
「う~ん……まぁ、そういう面倒なことにまきこまれやすい……ってことかなぁ」
……そう言われてしまうと、何も反論できない。というか、現在の状況そのものが、実際、面倒な状況であるわけだし……。
「……まぁ、それはともかく……もう部屋に戻ってくれ。明日、ゆっくり話そう」
「え~。せっかく、抜け出してきたんだし、もう少し話そうよ?」
前野にしては珍しく、子供のように不満そうにそう言う。こちらが悪い手前、あまり強くは言えなかった。
しかし、このままでいると、間違いなく、もっと面倒な状況に――
「こらぁ! お前ら! 部屋を抜け出すなぁ!」
と、廊下から声が響いてきた。そして、その直後に、こちらの部屋に向かってくる複数の足音が廊下の方から聞こえてくる。
「……え?」
おそらく、この部屋の奴らが、下手を打って、見回りの先生に見つかったのだろう。
そして、もっとヤバいのは……この前野がいる状況で、彼らが部屋に戻ってくるということだ。
前野を部屋の外に出している時間は、もうない。となると、俺が執るべき選択肢は……一つしかない。
「……前野。すまん!」
「え? わっ!」
俺は前野の頭から布団をかけ、そのまま自分も横になった。
つまり……布団の中に前野を隠したわけなのだが……要するに、一つの布団で前野と一書に寝ている状況になってしまったのであった。
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