第306話 想定外の質問
「くそ~、なんで見つかるんだよなぁ……」
俺は寝たフリをしながら、同室の連中が部屋に入ってくるのを聞いている。
そりゃあ、これだけの人数で部屋を抜け出せば、バレるだろうに……。
「まぁ、別にいいじゃねぇか。結局、部屋抜け出したからって、違う部屋の友達に会いに行くだけだし」
「そうだなぁ~。はぁ~、女子とかと逢い引きとかしたら、面白いんだろうけどなぁ~」
「逢い引きって……お前、なんか言葉古いぞ」
小さい声で笑いながら、皆そう言って布団に横になったようだった。
俺も寝たフリをしているが、布団の中で前野がもぞもぞと動いているのがとても気になる。
「……なぁ。後田って、もう寝てるのか?」
と、誰かが俺の名前を出した。なんだ……なんで俺の名前が出てくるんだ?
「いや、知らねぇけど……なんで? お前、仲良かったっけ?」
「別にそういうわけじゃないが……寝てるなら騒いで悪かったなぁ、って」
……いや、別に気にしなくて良い。
そう言ってくれるお前は、誰だか知らないが、優しいけれど、今は俺のことは気にしないでほしい。
と、なぜか、布団の中の前野が俺の体を触ってくる。卑猥な触り方ではなかったが……余計に気になってしまう。
「じゃ、確認してみるか」
そう言って、誰かが俺の方に近付いてくる……まずい。近くに来られたら、布団が異様に膨らんでいるのがバレてしまう。
「おい、後田~。起きているか~?」
「……起きてる」
俺はそう言って、何者かが近付いてくる前に、上半身だけ、体を起こした。
俺が返事をして起き上がると想定していなかったのか、俺を起こそうとしたヤツは驚いていた。
「あ……そ、そうか……悪かったな」
「おい。起こしちゃったんじゃないか」
そう言って、起こそうとしたヤツを咎める別のヤツ……声からして、コイツが俺のことを心配してくれたやつみたいだった。
「はぁ~……仕方ない。俺たちも寝るかぁ」
そう言って、皆薄暗い中、布団に戻っていく。
なんとか、乗り切った……俺がそう思った時だった。
「……なぁ。後田」
と、先程、俺のことを心配してくれたヤツがいきなり俺に話しかけてきた。
「……何?」
「その……ずっと気になっていたんだが、せっかくこういう状況になったし、お前に聞いてみたいことがあったんだ」
「……聞いてみたいことって?」
俺が困り顔でヤツのことを見ていると、ヤツは少し恥ずかしそうにしながら先を続ける。
「あー……こんなこといきなり聞くのはどうかと思うんだが……お前と前野って、付き合っているのか?」
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