第265話 火花

 修学旅行……言われてみれば、前野もそんなことを言っていた気がする。


 しかし……メンバーっていうのは、なんだろう……あれか。団体行動のメンバーのことか。


 当たり前であるが、就寝するのは男女別となるわけであるが、各所を団体で行動するのは確か、自由にメンバーを決めることができたはずである。


 自由にメンバーをくんで、自由に見学したい場所を決める……そういうことであったとは思うのだが……。


「まぁ、じゃあ、とりあえず、適当にみんなで話し合って決めてくれないかな?」


 先生がいつも以上に適当である。そして、その言葉とともに、皆席を立つと、それぞれ思い思いに行動を開始する。


「後田君」


 と、座ったままの俺は不意に前方から声をかけられる。


「……なんだ、前野」


 当然、前野だった。前野は笑顔で俺のことを見る。


「グループ、一緒になろうよ」


 ……想定していた通りの言葉だった。


「……いいのか? 俺で?」


 俺がそう言うと前野は目を丸くする。そして、なぜかフフッと微笑む。


「なんで? 駄目なわけ無いでしょ?」


「……そうか。それなら、いいが」


「待って下さい」


 と、俺が前野とグループを組むことを了承した直後だった。


「私も、後田さんと同じグループに入ります」


 そう言ってきたのは、端井だった。


「……端井」


 しかし、端井は俺のことを見ていなかった。鋭い視線で、前野を見ている。


 その視線の間には、何か……見えない火花のようなものが散っているように感じるのであった。

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