第264話 修学旅行

 学園祭が終わってから数日。


 祭りのあとというのはまさにこういった状況を指すのだろうが……なんとなく、学校全体も燃え尽きてしまったような生徒が多いような気がした。


 俺といえば……別に実行係が終わったから燃え尽きてしまったということもなく、朝のホームルーム中であったが、いつもどおりにぼんやりとしていた。


 といっても、ただ、ぼんやりとしていただけではない。前の席の……前野の髪の毛を見ていた。


 黒くて綺麗な髪の毛……この少女に、俺は告白されたんだということを今一度思い返してみる。


 それは、とても嬉しいことのはずなのだけれど……同時に、これから俺がどうすればいいかよく考えなければいけないということでもある。


 ふと、俺はちらりと今度は横に視線を移す。


 端井は……特にあれから何かしてくる、と言ったことはなかった。俺にも普通に接してくるし……前野と特に喧嘩しているわけでもない。


 今度は、別方向の横山の方を見る。横山からはあれからコンタクトがない。中原の件、どうするつもりなのだろうか?


 と、色々なことに思いを巡らせていた、そのときだった。


「じゃ~、そろそろ修学旅行のメンバーでも決めるかな~?」


 先生のその言葉で俺は我に返る。


 ついに、その時がやってきたのだと、俺も理解したのだった。

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