第230話 矛先

「えっと……久しぶり……だね」


 恥ずかしそうにそういう横山。俺と前野は……少なくとの俺はめちゃくちゃ居心地が悪かった。


 ……いや、俺は別に横山を騙したわけではない。前野も一緒に来たほうがいいと思ったからこそ、連れてきたのだ。


「愛留ちゃん、どうして学校に来ないの?」


 前野はド直球でそんなことを聞いた。前言撤回、前野はやはり連れてこなかったほう良かったような気もするが……。


 それを言われて横山はしばらく黙っている。そりゃあ、いきなりそんなことを言われてしまったら返事なんてできないんもわかるが……。


「……嫌だったから」


 と、横山はそれからしばらく経ってからそう言った。俺も前野も横山の方を見る。


「あはは……ごめんね。なんというか……辛かったんだよね。だから、行きたくなかったっていうか……」


 ……嫌だった? 辛かった? よくわからないが……そんなに横山にとっては学校に行くことが辛かったのだろうか?


「そっか。で、それは中原君のせいなの?」


 前野はどんどんとその続きを聞いていく。俺はただ呆気に取られるしかなかった。


 横山はしばらくの間黙っていたが……ニッコリと微笑んでから俺の方を見る。


「違うよ。それは……後田君のせいだよ」


 ……え? 俺のせい?


 いきなり飛んできた俺の名前に俺は驚くしかなかった。


 しかし、前野と横山は俺の方を見ている。


 どうやら……俺の方にとんでもない矛先が向いてきているようであった。

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