第207話 違う見え方
「……一体どういうつもりなんだ」
俺はその日の昼休み、流石に前野に訊ねてしまった。
「何が?」
「……何が、じゃない。なんでお前……自分から実行係に立候補するんだよ」
俺がそう言うと前野は少し考え込んだような表情をしたあとでうっすらと笑みを浮かべる。
「だって、後田君と実行係、やりたいなと思ったから」
……そんなことを言われては俺も怒りようがなかった。
実際、本気で言っているのかどうかはわからないが、そんなことを言われてしまうと、俺もそれ以上は怒りづらくなってしまう。
「あ、あのさ……」
と、俺と前野が話していると、ふいに別の方向から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……横山」
声のした方を見ると、横山が苦笑いしながらそこに立っていた。
「えっと……とりあえず、今日、放課後残ってくれないかな?」
「……俺は別にいいけど、お前はいいのか?」
俺がそう言うと横山は困ったような顔のままで笑う。
「まぁ、先生に直々に指名されちゃったからねぇ~……あはは、運ないなぁ、ホントに」
横山は苦笑いしながらそう言った。しかし……なんだろう。横山と話していると、どこかに違和感があった。
「私も別に放課後、用事がないから残れるよ」
「あはは……じゃあ、授業終わって、教室の掃除も終わったら教室に集合ね」
横山はそう言って俺たちと分かれると、中原達の陽キャグループの方に戻っていった。
「愛留ちゃん、疲れてるね」
「……そう、なのか?」
前野は悲しそうな目で横山を見ている。
横山は一見楽しそうに中原達陽キャグループと話しているように見えるが……前野は違う見え方をしているらしいのであった。
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