第107話 同様

「えぇ!? 前野さんの家に行ったの!?」


 次の日、昼休みに俺と横山は話していたが、ふとした拍子で俺は前野の家に行ったことを口にしてしまった。


「……あぁ。悪かったな、お前を呼ばないで」


「いや、そういうのは別にいいんだけど……」


 そう言って、少し離れた場所で会話していた俺と横山は同時に前野の方を見る。と、前野もニッコリと微笑んで横山の事を見ていた。


「……それで、何したの?」


「何って……普通に勉強だって言っただろ」


「……ホントに?」


 明らかに不審がっている視線で俺のことを見る横山。何を疑っているのかは知らないが、それしかしてないのだから、どうしようもない。


「……あぁ、本当だ」


「はぁ……まぁ、いいや。とにかく! 今度のテスト終わったらさ! どこか行こうよ!」


 横山はいきなりそう言ってきた。俺は思わず驚いてしまう。


「え……なんで驚いているの?」


「……いや、それ……前野からも言われたから」


「あ……な、なるほどね……」


 そう言って横山は今一度前野のことを見る。前野は相変わらず笑顔で俺と横山のことを見ていた。


「で、でも! ウチも後田君とどこかに行きたい!」


「……じゃあ、三人でどこかに行けばいいんじゃないか?」


 そう言うと拍子抜けしたような顔で俺を見る横山。


「……ダメなのか?」


「え、いや……う、うん……まぁ、そうだね。後でよく考えよう」


 そう言って横山は気まずそうに教室を出ていってしまった。


 俺は今一度前野を見る。前野は、まだ嬉しそうに俺のことを見ているのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る