第42話 デート?

 そして、日曜日になった。


 俺は、駅前に立っていた。なぜ、自分が今その場所にいるのかよくわかっていない。


 俺はふと時計を見る。待ち合わせの14時はそろそろだった。


「ごめん。待った?」


 と、前野の声が聞こえてきた。


 私服姿の前野は、初対面の人間のようで、俺は少し面食らってしまった。


 しかし、綺麗な黒髪を見ていると、それが俺のクラスメイトの前野であることを認識することができた。


「……いや、全然」


「そう。じゃあ、行こうか」


 前野に言われるままに俺は前のあとをついていく。


 前野に言われたのは、日曜日に近くの駅前で14時に待ち合わせ。


 俺はそう言われたことに対して何も疑問を感じなかった。


 しかし、駅前で待ち合わせて時間を気にしていた時、そして、前野が私服でやってきたことで、ようやく俺は認識することができた。


 これって、もしかしなくても……デートなんじゃないだろうか?


「後田君」


 と、前野がいきなり話しかけてくる。


「……なんだ?」


「どこか行きたいところある?」


「……いや、別にない」


「そう。じゃ、私が行きたいところに行っていいかな?」


「……いいんじゃないか。俺はどこでもいい」


 前野は満足したように頷いた。


 あれ? 今の返答からすると、前野の好きな場所に完全についていくことになってしまうが……いや、もうこうなってしまっては取り返しがつかない。


 俺は前野にただただ、ついて行くだけなのであった。

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