第43話 映画
「後田君って、普段は映画とか見るの?」
「……いや、あまり見ない」
「ふーん。まぁ、私も見ないんだけどね」
前野が最初に行きたいと言い出したのは、映画館だった。
……いやいや、明らかにこれはどう考えてもデートだろう。男女が映画館に行く……俺はデート以外でそういうイベントがあるのを知らない。
おまけに、俺と前野は並んで座っていた。いつもは前に座っている前野が隣にいるのは、なんだか落ち着かなかった。
「……これって、どういう映画なんだ?」
「え? 恋愛映画かな」
……おまけに見る映画も恋愛映画。もうどうしようもない。
いや、今は受け入れるしか無い。俺が前野にどこでもいいと言ってしまったのだから。
そして、程なくして映画が始まった。
前野の言った通り、まさしく恋愛映画だった。しかも、よくある学生の恋愛映画……普段だったら絶対に見ないだろう。
それにしても、恋愛映画ってのは、見ていてどうにも気まずいものだ。ましてや、それを前野と見なければいけないなんて、何かの罰を受けているかのようだ。
恋愛映画に欠かせないキスシーンがあった。俺は気まずくなって思わず隣の前野を見る。
と、なぜか前野は俺のことを見ていた。目があってしまって俺は益々気まずくなってしまった。
結局、何一つ頭に入らないままに俺は映画を見終えたのであった。
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