第25話 私だけ

「そういえば、後田君」


 と、前野はいつものように唐突に俺に話しかけてきた。


「……なんだ?」


「後田君って、私以外に友達、いないの?」


 悪気は全くないという感じで俺にそう聞いてくる前野。俺はこの質問にどのように答えればよいというのだろうか。


「……いるように見えるか?」


「ううん。いないと思う」


「……相変わらずお前ははっきりものを言うよな」


「うん。よく言われる」


「……そうだな。じゃあ、俺もはっきり言おう。俺には……前野以外に友達はいない」


 自分でも少し恥ずかしかった。なにせ、前野以外に友達がいないというのもなんとも前野に負けた気分になるからである。


「うん。私だけ、だよね。それなら、いいかな」


「……いや、良くないだろ。これだけクラスメイトがいて、一人しか友達がいないって……」


「それって、何か問題? 私は別にいいけど」


「……お前だって、友達を作る方法を聞いてきたじゃないか。あれ、誰かに試したのか?」


「ううん。試してないよ。試すつもりもないし」


「……なんなんだ。まったく……」


 俺が思わず呆れた顔をすると、前野がなぜか身を乗り出してくる。


「後田君は、私以外にも友だちが欲しいの?」


「……そりゃあ、友達は多い方がいいだろ」


 すると、なぜか急につまらなそうな顔で会話を打ち切る前野。


 なんだ? 何か俺、間違ったことを言っただろうか?

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