第26話 宣言
「ねぇ、後田君」
その日、俺は前野といつものように会話していた。
「……なんだ?」
「なんか、後田君のことを見ている人がいるけど、なんで?」
そう言って俺は前野の視線の先を追う。その先には……やはり、横山がいた。
横山は俺と前野の視線を感じると慌てて違う方向に顔を向ける。
「……知らないよ。俺は」
「でも、ずっと、後田君のことを見ている感じだったけど」
と、前野はいきなり立ち上がった。
「……お、おい。前野、ちょっと――」
俺が止める間もなく、前野はそのまま横山の席に向かっていった。
「ねぇ」
前野に呼ばれ、横山はビクッと反応する。そして、引きつった笑みを浮かべながら前野の方を見る。
「……な、何?」
「アナタ、どうして後田君のことを見つめていたの?」
「は、はぁ? な、何言っているわけ? 後田君のことなんて、見つめてなんていないんですけど……あ、アンタの勘違いでしょ……?」
明らかにキョドっている様子の横山。前野はしばらくジッと横山のことを見ていたかと思うと、いきなりその顔を横山の目と鼻の先まで近づける。
「ひっ!」
横山が短い悲鳴をあげる。
「後田君は、私の友達だから」
それは横山に静かに、しかし、強い圧を伴って宣言された。横山は怯えた様子で小さく頷くことしかできなかった。
それが終ると前野は戻ってきた。
「勘違いだったみたい」
勝ち誇った顔でほほえみながら前野は言う。前野真奈美は……敵に回してはいけないタイプのようであった。
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