第21話 プレゼント

 変なことが立て続けに起こってからしばらくのこと。


「後田君」


 前野が振り返って俺に話しかけてきた。ふと、前野が俺に聞いてきたことを思い出す。


 俺が前野のことを好きかどうかって話……無駄に俺はそのことを意識してしまった。


「どうしたの?」


「……いや、なんでもない」


 しかし……前野の方はまるで俺のことを気にしていないようである。


 まぁ、それはそうか……俺も無駄に変なふうに意識するのはやめよう。


「これ、見て」


 そう言って前野はなぜかスマホを見せてくる。


「……ぬいぐるみ?」


 そこにはくまのぬいぐるみが映っていた。例の「くまポン」のぬいぐるみのようだ。


「……それがどうかしたのか?」


「私が作ったの。可愛い?」


 首をかしげて聞いてくる前野。可愛い……と、聞かれればそうだとは思うが……。


「……可愛いいんじゃないか?」


 俺がそう言うと、前野は納得したように頷いた。


「そう。良かった」


「……なんでそんなこと聞くんだ?」


「だって、これ、プレゼントするから」


 ……プレゼント? 前野が? 誰に? なんで?


 そんな疑問が一気に俺の頭の中に浮かんでくる……って、いやいや、なぜそんなことを考える必要がある?


 どうでもいいじゃないか。前野が誰にプレゼントを渡しても。気にすることはないだろう。


「……そうか。良かったな」


 俺がそう言うと前野は少し不思議そうな顔をするが、それ以上は話しかけてこなかった。


 そうだ……俺には関係ないんだ。なぜか俺はずっとそのことを自分に言い聞かせていたのだった。

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