第22話 無関係

「後田……君」


 またしても聞き覚えのある声が聞こえてきた。廊下を歩いている俺に話しかけてきたのは……やはり、横山だった。


「……なんだ。またお前か」


「また、って……酷くない? ウチはアンタに話しかけちゃ駄目なわけ?」


「……別にそんなことはない。だけど、話しかけてきたからには何か用事があるんだよな?」


 俺がそう言うと横山は少し面食らっていたが、少しすると落ち着いた様子で俺を見る。


「そりゃあ……あるから話しかけたのに決まってんじゃん」


「……そうか。で、お前の用事ってなんだ?」


 と、急に媚びるような目つきで横山は俺のことを見る。


「その……こ、この前、急に変なこと言って逃げ出しちゃったじゃない? あれ……覚えてる?」


「……あぁ。覚えてる。ズルい、とかなんとか言ってたやつだろ?」


 俺がそう言うと横山は恥ずかしそうな顔でうつむく。どうやら、横山としてはあのことは忘れてほしいことのようだ。


「……別になんとも思ってない。お前が俺のことをどう思おうが、気にしないし」


「そ……そうなんだ……。なんか……後田君って、強いんだね」


 強い? 俺が? ……いや、そうじゃない。俺はただ、興味がないだけだ。


 興味がないから……前野が誰にプレゼントを渡そうとしても気にしないわけで……。


「後田君?」


「……え? な、なんだよ……」


 と、不意になぜか横山が俺のことを覗き込むように顔を近づけていたので、思わず後ずさってしまった。


「あ……なんか、考え込んでたから……」


「……どうでもいいだろ。お前には関係ない」


 俺はそれだけ言い残して、教室に戻ることにした。一度だけ背後を振り返ると、まるで捨てられた子犬のように、悲しそうな目で横山が俺を見ていたのだった。

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