第18話 お笑い

「後田……君!」


 その日、俺は教室に戻ろうとしていたのだが……廊下で急に呼び止められた。


 声のした方に振り返ると、金髪の少女がこっちにやってくる。


「……横山」


 俺は思わず嫌そうな顔をしてしまったが、横山は気にせずこちらに進んでくる。


「こ、この前のことなんだけど!」


 なぜか神妙な面持ちで俺に前のめりに話してくる横山。


「……この前?」


「そう! そ、その……なんというか、ウチがアンタを見ていたのは……気になってたからで……」


「……は? 気になってた?」


 意味不明な発言に、思わず俺が聞き返すと横山は大きく頷く。


「あ、アンタ……と、その……前野さんのことが……」


「……俺と前野?」


「うん……だ、だって! 二人ともすごく仲良さそうだし……」


 ……仲が良さそう? さすがに俺もその言葉は聞き間違いだと思った。俺と前野の様子をどのように見たら、仲が良さそうに見えるのだろうか。


「だから、何話しているのかなぁ、って、気になって……」


「……あぁ、そうか」


「……っていうか! あ、アンタって……前野さんとその……つ、付き合っているの!?」


 横山はなぜかめちゃくちゃ恥ずかしそうに俺に聞いてきた。


 ……付き合っている? 俺と前野が?


「……フッ。フフフッ……」


 思わず俺は笑ってしまった。


「な、なんで笑うの!?」


「……いや、すまん。俺が前野と……そういうふうに見えたっていうのが、面白くて、つい……」


 笑いを抑えながら俺は教室に戻るべく、歩き始める。


「ちょ、ちょっと! 答えてよ! どうなの?」


「……さぁ? 想像に任せる」


 俺がそう言うと横山は呆然として俺のことを見ていた。それにしても……俺と前野が付き合っているふうに見えるとは……わからないものである。

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