第17話 見ている

 それから、俺はどうにも横山のことが気になった。なにせ、横川ときたら、気づけば俺のことをチラチラと見ているのだ。気にしないほうが難しい。


 で、観察してわかったのは横山が……見た目通りの人間ではないということだ。


 ギャルっぽい横山は、いつもクラスのギャルっぽいグループに絡んでいるのだが、どうにも、あまり会話に参加させてもらっていないように見えるのだ。


 いつもグループの端にいて、適当に相槌を打ったり、愛想笑いをしたりしている。


 それがわかったといって、俺にとってはどうでもいいことだし、横山に何か言うというわけでもなかったのだが。


 だが、チラチラと見られるのは俺としてもいい気分ではない。


 そこで、その日、俺は積極的に横山の方を見ることにした。授業中で暇になると横川の方を見た。


 結果として俺は、放課後までその日一日、ほとんど横川のことを観察していた。


 そして、放課後。


「あ……あのさ!」


 と、横山が俺に話しかけてきた。なぜか少し怒っているような感じである。


「……何か?」


「な、何かウチに言いたいことでもあるの? 今日、その……ずっとこっち見てたし……?」


 横山にそう言われ、俺は落ち着いて返事する。


「……ずっと見られているの、嫌だろ? これでお前も人の気持ちがわかったか?」


 俺がそう言うと、横山は顔を真っ赤にしてそのまま教室を出ていってしまった。


「何? あの子と揉めてたの?」


 と、そこで前野が俺に話しかけてきた。


「……いや、別になんでもない」


「ふぅん。そう」


 そして、前野も興味がないと言った感じで帰っていった。とりあえず、これでももう、横山は俺のことを不必要に見てこないだろう……その時はそう思っていたのだった。

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