第16話 寂しい

「おはよう」


 次の日、前野は普通に登校してきた。


「……なんで昨日休んだんだ?」


「あぁ。ちょっと、疲れちゃったから」


 疲れた……って、もしかして、俺と買い物をしたのが疲れたって意味なのだろうか。そう考えるとかなり厳しい気分になる。


「そういえば、後田君は昨日大丈夫だった?」


「……大丈夫って? 別に俺は普通に登校してきたが?」


「そうじゃなくて。寂しくなかったかな、って」


「……寂しい? 俺が?」


「うん。だって、私がいないと後田君、話す相手いないでしょ?」


 至極真面目な顔でそういう前野。いや……この表情、マジで悪気はないのだろう。


「……大丈夫だったよ。寂しくなかった」


 すると、前野は少しムッとした顔で俺を見る。


「ホントに? 寂しくなかったの?」


「……あぁ。そこまで俺は寂しがり屋じゃないからな」


 俺がそう答えると、前野はさらに不機嫌そうな顔をしてそのまま前を向いてしまった。


 なんだろう……何か、気に障ることでも言っただろうか?


「……ん?」


 と、俺はなぜかどこからか視線を感じた。思わず視線を感じたほうを見る。


「あ……」


 感じた視線の先にいたのは……横山だった。横山は俺と視線が合うと、小さく声をあげてそのまま顔を反らしてしまう。


 前野といい……なんだか、俺の席の周囲には変なヤツが多いな……。

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