第15話 ギャル

「……まさか、買い物に付き合わされるだけとはな……」


 結局、前野が俺に付き合ってほしいというのはあのクマのキーホルダー……くまポンの買い物だった。


 まぁ、俺が変な期待していたのも悪いのかもしれないが。


 で、今日は、前野は俺に話しかけてこなかった。


 なんと、前野は今日、学校を休んでいるのである。理由は知らないが、珍しいこともあるものである。


 しかし、今日はそれなら久しぶりに俺も静かに過ごすことができるはずで――


「ね、ねぇ……」


 誰かの声が聞こえてくる。俺は声のした方に顔を向ける。


 そこには明るい金髪の女子が立っていた。いわゆるギャルって感じで見た目は、前野と真逆の感じの女子だった。


「……えっと、何か?」


「あ……えっと、後田君……だよね?」


「……そうだけど。えっと、誰だっけ?」


「え? あ、あはは……わかんないのか。えっと……ウチはアイル。ほら、隣の席の……横山愛留」


 なぜか苦笑いしながらそう言うギャル……横山。


 横山……あぁ、俺の隣の席の女子か。前野に構ってばかりで全然気にしていなかった。


「……あー……えっと、横山は、俺に何か用事?」


「用事、ってわけじゃないんだけど……なんか暇そうだなぁ~、って思ったから、話しかけてみたんだけどね~……あ、あはは~……」


 そう言ってヘラヘラと笑っている横山。なんだ? ギャルが陰キャの俺を馬鹿にしているってことなのか?


「……用事がないなら、もういいかな?」


「え? あ……うん……。ご、ごめん……」


 なぜか意気消沈して横山は自分の席に戻っていってしまった。


 ……一体なんだったんだ?

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