第14話 興奮
「後田君」
前野が振り返って俺に話しかけてきた。こころなしか、前野は少し緊張しているように見える。
「……どうしたの?」
「今日、暇でしょ?」
……いきなりすぎて意味がわからなかった。なぜいきなり俺に暇かどうか聞いてくる? 俺のことを馬鹿にしている……というわけではないだろうが。
「……いや、まぁ、暇だけど」
「そうよね。その……行きたい場所があるの」
「……行きたい場所? 前野が?」
俺が確認すると、前野は小さく頷く。
「それで……その場所はちょっと一人だと行きにくいから……誰かと一緒に行こうって、ずっと思っていたの」
「……つまり、そこに俺もついて行け、と」
俺がそう言うと前野は大きく頷く。
……これって、もしかしなくても、もしかするんじゃないか? 俺はにわかに今自分が人生で初めての経験をしていることを自覚する。
「駄目?」
前野はいつもと違う、懇願するような視線で俺を見る。そんな目で見られて……断れる男は世の中にはあまり多くないだろう。
「……わかった。ついて行く」
「そう。ありがと。じゃあ、放課後、ついてきてね」
それだけ言って前野との会話は終わった。
……いや、普通に会話終わっちゃったけど……これって、要するにそういうこと、なんだよな?
俺はその時間違いなく、今までの人生でこの上なく興奮していた。
そう。この時までは。
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