第7話 提案
その日は前野の様子がどうにもおかしかった。しきりになぜか背後の俺のことをチラチラと見てくるのである。
一体どういうつもりなのかさっぱりわからないが……おそらく、何か俺に話したいことがあるのだろう。
しかし、結局、放課後になるまで前野は話しかけてこなかった。話しかけてこないのならば、わざわざあえて相手をする必要もない。俺はそのまま帰ろうとした、が……
「後田君」
帰ろうとしたその時に、前野が俺に話しかけてきた。
「……なんだ? 前野」
前野はジッと俺のことを見つめている。俺は視線を反らすこともできず、気まずい思いをした。
「後田君は、私と友達になりたいって、思わないの?」
「……なんだって?」
「だから、私と友達になりたいって思わないのか、って聞いているの。どう?」
前野は至極真面目な顔で俺を見ている。どうやら……本気で言っているようである。
「……えっと、それって、前野は俺と友達になりたいってことなの?」
「は? 違うって。後田君が私と友達になりたくないの、って聞いているの」
前野はずっとこの調子である。俺は……そのまま何も言わずに前野に背を向け、そのまま足速に教室を出た。
背中には前野の視線を感じる。感じながらも、俺は前野の問いかけに答えることができなかった。答えることができるほど……俺は強い人間ではないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます